« 『巨人たち』 ル・クレジオ (新潮社1973) | トップページ | 『愛する大地(テラ・アマーダ)』J.M.G.ル・クレジオ (1968)   »

2007年6月15日 (金)

『大洪水』 J.M.G.ルクレジオ (河出書房新社1970)

初めに雲があった。風に追いたてられながらも、山脈によって水平線にすがりつく、暗雲の群れがあった。あらゆるものは重く佇み、残光を散らせたりしながら、メタリックな薄い鱗のように整然と覆われていた。近づきつつある事件の異常さに圧倒され、やがて戦いを挑まなくてはならぬ者との対比の中で、おかしげに弱々しく煌めき始めた。運動はわずかずつされる転調の様式をやめない。大地を微少に蝕み、腐敗させ、活動の内部へ染みこんで、かつて多種多様に確立されてきた調和を破壊し、物質の核心に生命の起源まで無力してゆく。永遠に継続される固定化や、全体的な凍結を遅らせるために消耗してしまう。繊細な薄い影は、景色を覆いながら眩い光の形を無数に紡ぎ出す。歩道沿いにタンクローリーが潰していった硝子の破片は、太陽をいくつか合わせた激しさで、辺り一面の空間へ百光年のエネルギーを反射しているかのようであった。
          A A A A
          A A A A
          A A A A
          A A A A
すべての物体、すべての原子は A と書かれている。あらゆる出来事、あらゆる構造が、そこでは魔術的な四角形を描いている。(本書導入部より)

Jean Marie Gustave Le Clezio
1940.4.13- 1940年,地中海岸のニース生まれ.父方はブルターニュからインド洋モーリシャス島に移住した家系で,19世紀 初めに同島が英領となったとき英国籍に.母も同様の家系だが,パリ出身.両親はいとこ同士で,父親が医学を 学んでいたロンドンで出会った.ニースで生まれたのは偶然だが,戦時下の幼時,米独双方によるこの町の破壊 に強い印象をうけて育つ.ニース大学およびイギリスのブリストル大学で学ぶ.
1963年,『調書』で作家としてデビュー.『発熱』(65年),『洪水』(66年),『物質的恍惚』(67年)など の初期作品群を次々に発表し,ヌーヴォー・ロマン全盛期の首都からは距離を置いた独自の作家的地位を築く. ロートレアモン,アルトーやミショーへの関心からわかるとおり,当初は言語実験的色彩が濃厚だったが,文体 はやがて簡素・平明に.むきだしの土地,陽光,砂漠,水,動植物がおりなす物質的世界に対する異様なまでに 鋭敏な感受性に加えて,アメリカ先住民世界への深い共感を際立った特徴としている.
70年から74年にかけてパナマの密林に住むエンベラ族と暮らす.この経験から生まれた傑作エッセー『悪魔祓い』 (71年)につづいて,70年代後半からはメキシコへの傾倒を深め,ミチョアカン大学や,プエブロ・インディア ンの土地であるアメリカのニューメキシコ大学で客員教授を務めつつ,ヨーロッパによる先住アメリカ文明に対 する侵略と強奪という,人類史上もっとも大規模で残虐な破壊の歴史を考察.「チラム・バラムの書」『ミチョ アカン報告』のフランス語訳(76年,84年)を試みる一方,『メキシコの夢』(88年)に結実するエッセーを書 き継いだ.

http://www.diplomatie.gouv.fr/label_france/FRANCE/LETTRES/clezio/page.html
http://www.foiredulivre.com/2003/FDL_infos_presse_visuels_ambiance.htm
http://www.scuole.prato.it/copernico/arianna/due/saggi/clezio/sommaire.htm
http://webpages.ull.es/users/joliver/LiterFran2/XX.htm 

詩作や小説を超えた書物は、形式機能を覚醒させ問いただす行為となった。
ロゴスによって支配されていないインディオの文化を体感した若きル・クレジオは、その後マヤ文明の著作物を翻訳して向こう側の存在を意識することとなる。彼が奄美を訪れたのは当然の帰結ともうけとれる。

ル・クレジオ初期作品の研究ページ
http://koinu2005.seesaa.net/archives/200508.html 

« 『巨人たち』 ル・クレジオ (新潮社1973) | トップページ | 『愛する大地(テラ・アマーダ)』J.M.G.ル・クレジオ (1968)   »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
フォト

22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。