« 『心変わり』 M.ビュトール/『消しゴム』アラン・ロブ=グリエ/『小説ドラマ』フィリップ・ソレルス | トップページ | 絵画やカラーイラストの描写手法がとられている文体 『ファルサロスの戦い』 クロード・シモン(白水社)  »

2008年1月 6日 (日)

ヌーヴォー・ロマン(Nouveau roman、「新しい小説」の意)

フランスで発表された前衛的な小説作品群を形容した呼称で、アンチ・ロマン(Anti Roman、「反小説」の意)と呼ばれることもある。1957年5月22日、ルモンド誌上の論評においてÉmile Henriotが用いた造語。 実際には、明確な組織・マニフェスト・運動があったわけではなく、従来の近代小説的な枠組に逆らって書いた同時代の作家達を総称するためのジャーナリスティックな呼称であるが、1963年には「新新フランス評論」誌などでのアラン・ロブ=グリエによる論争的評論が『新しい小説のために』(Pour un Nouveau roman)としてまとめられている。 上記のロブ=グリエをはじめ、クロード・シモンやナタリー・サロート、ミシェル・ビュトール等が代表的な作家とされ、広くはサミュエル・ベケット、マルグリット・デュラス等を含むこともある。上記作家の小説作品の多くがミニュイ社Éditions de Minuitから刊行されていることは単なる偶然ではない。

Better_buckyball

作者の世界観を読者に「押しつける」伝統的小説ではなく、プロットの一貫性や心理描写が抜け落ちた、ある種の実験的な小説で、言語の冒険とよんでいい。その技法は「意識の流れの叙述」(ナタリー・サロート)や「二人称小説」(ミシェル・ビュトール)、「客観的な事物描写の徹底」(ロブ=グリエ)など様々だが、読者は、与えられた「テクスト」を自分で組み合わせて、推理しながら物語や主題を構築していかざるを得ない。サルトルやバルトらに擁護された面もある。

1960年代後期以降はヌーヴォー・ロマン(アンチ・ロマン)の動向をより批判的に発展させた、フィリップ・ソレルスを中心とするテル・ケル派(文学理論雑誌Tel Quelを基軸に活動したことからこう呼ばれた)に活動が継承された。しかし、1970年代入るとフィリップ・ソレルスがマオイズムに傾倒し、テル・ケル派も政治的な色合いが濃厚になり文芸活動としての側面は次第に薄れていった。

20040210bane1 20040210bane1

ミシェル・ビュトール(Michel Butor, 1926年9月14日-)はフランスの小説家、詩人、批評家、ブック・アーチスト(livre d'artiste)。フランス北部リール郊外で生まれる。ヌーヴォー・ロマン(nouveau roman)の作家の旗手のひとりと目される。

1956年、小説第2作『時間割』でフェネオン賞(le Prix Fénéon)を受賞、翌年1957年第3作目の『心変わり』(La Modification)でルノードー賞(le Prix Théophraste Renaudot)を受賞し注目を集めた(主人公に2人称代名詞「あなたは」<vous>を採用した小説作品として有名)。1960年に4作目の『段階』(Degrés')を発表後は小説作品から離れ、1962年『モビール -アメリカ合衆国の表現のためのエチュード』(Mobile. Étude pour une représentation des États-Unis)を皮切りに空間詩とよばれる作品を次々と発表し始める。

画家とのコラボレーション作品が数多く、書物を利用した表現の可能性を追究し続けている。文学をはじめ絵画、音楽などを論じた批評集『目録』がある。

(発表年順。『』内は邦題ないし仮題。訳書がある場合はそれを踏襲)

1954年:『ミラノ通り』(Passage de Milan , Ed.Minuit. 松崎義隆訳、竹内書店、1971年)
1956年:『時間割』(L’Emploi du temps, Ed.Minuit. 清水徹訳、河出文庫版、2006年 / 中公文庫、1975年 / 『世界の文学49 サルトル・ビュトール』収中「時間割」清水徹訳、中央公論社版、1964年)
1957年:『心変わり』(La Modification, Ed.Minuit. 岩波文庫版、2005年 / 河出書房新社版1971(1959)年、ともに清水徹訳)
1958年:『地霊』(Le Génie du lieu , Bernard Grasset.邦訳は一部『現代フランス文学13人集 / 4』収録「エジプト」清水徹訳、新潮社、1966年)
1960年:『目録1-5』(2以降はそれぞれ64/68/74/82年発表)Répertoire I 〜V, Ed.Minuit, 1960, 1964, 1968, 1974, 1982. 『段階』(Degrés, Ed.Gallimard. 邦訳『段階』中島昭和訳、竹内書店、1971年 / 『世界の文学25 ロブ=グリエ・ビュトール』所収、中島昭和訳、集英社、1977年)
1961年:『ボードレール』(Histoire extraordinaire, essai sur un rêve de Baudelaire , Ed.Gallimard, 高畠正明訳、竹内書店、1970年)
1962年:『モビール―アメリカ合衆国の表現のためのエチュード』(Mobile, étude pour une représentation des États-Unis, Ed.Gallimard)、『航空網』( Réseau aérien, Ed.Gallimard)
1963年:『サン・マルコ寺院の記述』(Description de San Marco, Ed.Gallimard)
1964年:『イラストレーションI~IV』(Illustrations I - IV, Ed.Gallimard, Ⅱ以降はそれぞれ、69/73/74年発表)
1965年:『毎秒水量681万リットル』( 6 810 000 litres d’eau par seconde, Ed.Gallimard)
1967年:『仔猿のような芸術家の肖像 :綺想曲』:(Portrait de l’artiste en jeune singe , Ed.Gallimard. 清水徹・松崎義隆訳、筑摩書房、1969年)、『ビュトールとの対話』(Georges Charbonnier Entretiens avec Michel Butor , Ed.Gallimard,1967. 邦訳ビュトール / シャルボニエ著、岩崎力訳、竹内書店、1970年)
1968年:『モンテーニュ論:エセーをめぐるエセー』(Essais sur les essais, Ed.Gallimard. 松崎義隆訳、筑摩書房、1973年)
1970年:『羅針盤』(La Rose des vents, 32 rhumbs pour Charles Fourier, Ed.Gallimard)
1971年:『ディアベリ変奏曲との対話』(Dialogues avec 33 variations de Ludwig van Beethoven sur une valse de Diabelli, Ed.Gallimard. 工藤庸子訳、筑摩書房、1996年)、『土地の精霊~どこでもない』(Le Génie du lieu II : où, Ed.Gallimard)
1973年:『合い間』(Intervalle, Ed.Gallimard. 清水徹訳、岩波書店、1984年)
1975年:『夢の素材』(Matière de rêves, Ed.Gallimard)
2006年:『ビュトール全集 I. 小説』(Œuvres complètes de Michel Butor : Volume I – Romans , Ed. La Différence)『ビュトール全集Ⅱ. 目録1』(Œuvres complètes de Michel Butor : Volume II – Répertoire 1 ,Ed. La Différence)『ビュトール全集Ⅲ. 目録2』(Œuvres complètes de Michel Butor : Volume III – Répertoire 2 , Ed. La Différence)『ビュトール全集Ⅳ. 詩 』(Œuvres complètes de Michel Butor : volume IV – Poésie 1 , Ed. La Différence)

ビュトールweb事典
http://perso.orange.fr/henri.desoubeaux/

Michel ButorTextes poétiques et essais en ligne de l'auteur français.
http://perso.orange.fr/michel.butor/

時として言葉には二つの意味がある 遅かれ早かれ、私たちが皆、一つに帰って来るか、または文字通り、場所に、霊的、感情的または心理学的に、それは私たちを形成することにおける役割を持っていました。
ある日、それを知らないで、私たちはそこにいます。
私たちは私たちへ私たちがなったことにした力に立ち向かいます。
そして私たちは円を完成します。      Lewis Spence -

Octoratomic_2  Octoratomic_2  Octoratomic_2  Octoratomic_2 

« 『心変わり』 M.ビュトール/『消しゴム』アラン・ロブ=グリエ/『小説ドラマ』フィリップ・ソレルス | トップページ | 絵画やカラーイラストの描写手法がとられている文体 『ファルサロスの戦い』 クロード・シモン(白水社)  »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ

羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
フォト

22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。