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2008年2月 9日 (土)

「循環」を起動させるものこそが「作品」

「芸術家は作品の起源である。作品は芸術家の起源である」

マルティン・ハイデッガー(1889〜1976 現代ドイツ哲学)は、建築作品としてのギリシヤの神殿について次のように語る。

「そこに立つ建築作品は岩根の上にやすらっている。この作品がこのようにやすらうことによって、岩からそのぶこつな、だがやはり何ものへ向けられているのでもない支える力の暗さがとり出される。そこに立つその建築作品は、その上に荒れ狂う嵐に耐え、そのようにしてはじめて嵐の荒々しい力に気づかせる。石材のきらめきと輝きは、見たところただ太陽の恩恵によるように見えるが、むしろそれがはじめて日の光や空の広がり、夜の闇を現出させるのである。それが確固とそびえ立つことにおって、大気の満ちた眼に見えぬ空間が可視的になるのだ。この作品のゆるぎなさが大海原の潮の波立ちから際立ち、この作品の安らぎを背景に潮騒が響きわたるのである。樹と草、鷲と牛、蛇とこおろぎが、この作品のまわりではじめてそのくっきりとした形態をとるようになり、それらがそれぞれに現われ出てくることになる。このように姿を見せ立ち現れることそのことを、そしてその全体を早朝のギリシア人たちはピュシスと呼んだ。ピュシスは同時に、人間がその上に、またそのうちにおのれの住まいを定めるあのものに光を当てる。われわれはそれを〈大地〉と呼ぶ。・・・・・・大地とは、立ち現れることがすべての立ち現れるものを、しかもそのように立ち現れるものとしてのそれらを、そこへ引きもどしてかくまうところである。立ち現れるもののうちで、かくまうものとしての大地が現成するのである。・・・・・神殿という作品は、そこに立つことによって一つの世界を開き、同時にその世界を大地へと送りかえす。そのようにしてはじめて大地そのものも、故郷とも言うべき基底としての姿を現わすのである。」『芸術作品の起源』

木と草、ワシと牡牛、蛇とコオロギはまずその安らぎの際立った形のなかへ入りこむ、そしてそれらがそれであるところのものとして現れ出てくるのだ。
作品は大地を或る一つの大地であらしめる。
存在に対する問いは、循環におちいってしまうのではないかという危惧が表明されるが、存在に対する問いがもつ「前提」と、演繹的な思考における「発端」とが区別され、前者においてはいかなる循環もない。
「或る存在者の存在様態としての問うことに、問われているもの〔存在〕が『逆行的もしくは先行的に関係づけられている』という注目すべきことなら、たしかにある。」
問いをたてる人間存在の側の在り方は循環的であるということが述べられている。
問いにおける「循環」が、了解と解釈の唯一可能な方法とされている。循環であるとの非難は、従って自然認識をモデルとするような「或る特定の認識理想」の立場からのみ提示されるものとして相対化される。「循環」のうちにこそ「最も根源的な認識の或る積極的な可能性が秘匿されている」
だが人間存在について「循環」という性格づけをすることは、「循環」が事物的存在性に関わるものだから、避けるべきである。

「気遣いの存在意味の学的解釈のために獲得された解釈学的状況と、実存論的分析論一般の方法的性格」では、自己解釈が人間存在に属するものとされる。自己解釈が循環的な構造をもつことから、「循環」は人間存在に属するものとなる。「根源的に、また全体的にこの『円環』のなかへと飛びこみ、かくして、現存在分析のために置かれた発端においてすでに、現存在の循環的な存在へと向けられた完全な眼差しを確保することをめざして努力されなければならない」と語られている。
このような「循環」を起動させるものこそが「作品」(Werk)なのである。

Martinheidegger
『存在と時間』(1927)によると、物はただ存在している。人間はただ存在するだけではなく、自分の存在をたえず配慮している。自分が生きているということを、たえず配慮する。「自分の存在を配慮する存在」。こういうあり方を「実存」というのがハイデッガーの定義である。
いつでも自分自身に反省的に(レフレクティブ reflectiveに)自分自身のあり方をいつでも考えようとしている生き物だという。こういうあり方、存在のしかたを実存という。

Martin Heidegger『存在と時間』(Sein und Zeit)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%A8%E6%99%82%E9%96%93

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