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2008年3月27日 (木)

キチガイ博士手記 6

 ――余ノ調査研究セルトコロニ依(よ)レバ、既ニ往昔(おうせき)ヨリコノ種ノ犯罪ガ行ワレツツアリシ事実ヲ認ムルヲ得ベシ。例エバ役行者(えんのぎょうじゃ)、阿部晴明(あべのせいめい)、弘法大師等ノ密教、陰陽術ノ流(ながれ)ヲ伝ウル者、真言秘密ノ行者、修験者(よげんじゃ)、祈祷師、代人、巫女(みこ)、ソノ他、何々教、何々様ト称スル神仏類似ノモノニ奉仕スル輩ノ中ニハ、積年ノ経験ヨリ得タル一種ノ精神科学的ノ暗示法ヲ口伝(くでん)心伝シオリ、コレヲ理智、理性ノ発達不充分ナル女子、小児、モシクハ無智、蒙昧(もうまい)ナル男子等ニ応用シテ、ソノ精神作用ニ何等カノ変化、傷害ヲ与エツツ、利得ヲ恣(ほしいまま)ニセシ形跡アリ、即チ、古来伝ウルトコロノ「狐ヲ使ウ」「真言秘密ノ呪法(じゅほう)ニカケル」又ハ「生霊、死霊ヲ憑(つ)ケル」「神罰、仏罰ヲ当テル」等ノ霊験、神業(かみわざ)、行力(ぎょうりき)等ニ類似シタル所業ハ、精神科学ノ立場ヨリ見ルモ絶対不可能ノ事ニ非(あら)ザレバナリ、ソノ高等ナルモノニ到リテハ、催眠術、心霊術、降神術等ノ技術者ガ、文明社会ノ裏面ニ於テ異常ナル勢力ヲ保有シオリ、玄怪ニシテ捕捉シ難キ犯罪事件ノ裏面ニ往々ニシテコノ種ノ技術ノ活躍セル証拠ヲ見ルトキハ、ソノ全部ガ理智的詐術ナリトハ断ジ難(かた)キモノアリ――
 ――現今、我国内ニ於テモ、到ル処ノ精神病院、行路病者収容所、又ハ街頭ヲ彷徨(ほうこう)スル精神異常者ノ中ニ、カカル犯罪行為ノ犠牲者ガ存在シオラズトハ断言シ難シ、唯(ただ)、コレヲ合理的ニ探査追求シテ、犯人ヲ検挙スル事ガ、目下ノトコロ、殆ンド不可能ナルガタメニ、実例トシテ列挙シ難キノミ。何トナレバ、此(かく)ノ如キ手段ヲ用イテ、精神的ニ人ヲ殺傷スル場合ニハ、他ノ犯罪手段ニ於ケルガ如キ物的証拠ヲ厘毫(りんごう)モ留メズ、一滴ノ血、一刹那(せつな)ノ音響、一片ノ煙ダモ認ムル能(あた)ワザルノミナラズ、当該被害者モ亦(また)、直チニ一切ノ証言ヲ為シ得ベキ資格ヲ喪失スルト同時ニ、ソノ精神ノ異状ヲ回復セムガタメニハカナリノ長日月ヲ要シ、又ハ永久ニ回復セズ、万一コレヲ回復スルモ、ソノ被害当時ノ回想、又ハ犯罪手段ニ対スル記憶ノ残留セルモノアリヤ否ヤ、甚(はなは)ダ疑問トスベキモノアリ、調査上甚シキ困難ニ遭遇スベキ事、予想ニ難カラザレバナリ――
 ――思ウニ現代ノ文化ハ所謂(いわゆる)、唯物科学ノ文化ナリ。故ニ、随(したが)ッテソノ間(かん)ニ行ワルル犯罪ノ種類モ亦(また)、唯物科学ノ原理ヲ応用セルモノ多カルベキハ自然ノ理ナリ。然(しか)レバ将来、精神科学ノ諸般ノ学理ガ、一般ノ常識トシテ普及スルニ到ラムカ、同様ニコレヲ応用セル犯罪ガ、旺盛ナル流行ヲ示スベキハ論ヲ俟(ま)タザルベク、而(しか)シテソノ犯行ノ恐怖、戦慄ニ値スベキ事、現代ノ所謂、唯物科学応用ノ犯罪ノ比ニ非(あら)ザルベキモ亦自明ノ理ナルベシ。而シテ此(かく)ノ如キ犯罪ニ対シテ、吾人法医学者ハ、如何ニシテ犯罪ヲ調査シ、兇器ヲ研究スベキヤ。如何ナル基礎知識ニ照シテ、犯行ノ径路、手段ノ内容ヲ明カニスベキヤ――云々――

 ……どうです諸君。吾が畏敬すべき法医学者、若林鏡太郎君は、遠からず全世界に大流行を来(きた)すべき「精神科学応用の犯罪」を研究して、その流行を未然に喰い止めるべく、その実例を蚤取眼(のみとりまなこ)で探している。その犯罪の被害者らしい精神病者や自殺者が、地上到る処にウヨウヨしているに拘わらず、その犯行の手がかりとなるべき暗示材料、その他の証拠が見当らないために、本当の研究が発表出来ないという悲惨事に直面して、あらゆる苦心惨憺を続けている。そうして、あらゆる人間の身振り、素振り、眼付き、手付き、口つき、言葉つきの端々(はしばし)に到るまでも、精神科学応用の犯罪ではないかと疑い続けているのだ。
 ……然(しか)るにだ……。
 ……諸君どうです……。
 ここに一つドエライ研究材料が、吾輩の処へ転がり込んで来たものだ。……もっともコイツを最初に発見したのは、今の若林鏡太郎君で、同君はこれを空前の「精神科学応用の犯罪」に相違ないと睨んで、調査を遂(と)げて来たものなんだが、一方に、吾輩の所謂「心理遺伝」の参考材料としても、その価値は形容の出来ない程に素晴らしいものがある。しかも、そいつに釣り込まれて、ウッカリ手を出したのが運の尽きで、流石(さすが)の吾輩も十万億土行きの片道切符を買って、裸一貫で逃げ出さなければならない破目に立到ったほど、それほど左様に恐しい研究材料だったのだ。……その発狂の動機となっているモノスゴイ暗示材料の正体は勿論の事、その心理遺伝に支配された夢中遊行開始前後の怪奇、悽愴(せいそう)を極めた状況。もしくは心臓がトロトロと溶解して、流れて行くくらい気持のいい、心理遺伝の内容の詳細まで、何一つ遺憾なく完備した、途方もない調査記録が手に這入(はい)ったのだ。実に、国宝とも世界宝とも何とも言いようのない……極度に科学的で、徹底的にローマンチックな、エロ、グロ、ノンセンス共に百二十パーセント以上の含有量をもった……空前絶後の超々特作的スケールの雄大さと、ストーリーの深刻さをあらわした……実にソノ何とも彼(かん)とも……。
 アハアハアハ。イヤ失敬失敬。わかったわかった……拍手は止してくれ給え。形容詞ばかり並べて済まなかった。どうもアルコールが欠乏して来ると、アタマの反射交感機能が遅鈍になるのでね。チョット失敬してキング・オブ・キングスの喇叭(らっぱ)を吹(ふか)してもらおう。序(ついで)にハバナの方も一つ輪に吹(ふか)して……オットット……これはしたり。吾輩はまだ教壇の前に居るんだっけね。早速スクリーンの中から引退して、代りに今云った怪事件の内容を映写しながら弁士の役を引受ける事にする。そうして諸君の常識を一撃の下にコッパ・ミジンに……。
 ……ナニ……吾輩がスクリーンの外へ出たって、おんなじ事じゃないかって……?……。ウワア。コイツは又一本参られた。ソウ頭がよくちゃ始末が悪いね。……実はモウ暫くすると今一人、別の吾輩が銀幕の中に現われて、その怪奇を極めた心理遺伝事件の内容を「解放治療」の実験にかけて行く実況を演出する事になるのだ。だからその時にそのモウ一人の吾輩である吾輩は、是非とも映写幕の外に出て、説明役にまわらないとドウモ具合が悪いのだ。未来派の芝居とは違うからね……。
 ……勿体(もったい)なくもK(ケー)・C(シー)・MASARKEY(マサーキー)会社の超々特作と題しまして『狂人の解放治療』という、勿論、今回が封切の天然色、浮出し、発声映画と御座いまして、出演俳優は皆、関係者本人の実演に係る実物応用ばかり……稀代の美少年と、絶世の美少女を中心として、渦巻き起る不可解に続く不可思議、戦慄に続く驚異の裡(うち)に、二十余名の男女の血と、肉と、霊魂とがいつからともなく、どこからともなく卍巴(まんじともえ)と入り乱れて参りまして、遂にはこの「狂人解放治療場」に於て、悽惨、無残、眼も当られぬ結末を告げるか、告げぬかの際どいクライマックスに到達しようという……よろしく満腔の御期待をもって……【溶暗】……

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羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
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    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

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    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。