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2008年3月 8日 (土)

「百頭女」La Femme 100 Tetes マックス・エルンスト

1929年、Editions du Carrefour, Paris、コラージュのコロタイプによる複製147点+表紙1点、1000部、26x21x4.5cm(本サイズ)。古本や雑誌、科学書等を集め、その中で用いられていた挿し絵を切り抜き、 それらを貼り合わせることによってコラージュを制作した。このようにして制作したコラージュを 多数用いて絵物語風の小説を作り上げた。 このエルンストのコラージュの複製147点から成るコラージュ小説「百頭女」は、3大コラージュロマン(「慈善週間 または七大元素」、「カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢」)の中で一番最初に発表された作品。

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  ページを開くと、古い木版画の線描の美しさにまず惹かれる。 読み方には特に何のルールも制約もない。適当なページをぱっと開いてそこから逆に前の方に繰っていってもいいし、何ページか飛ばして見て行ってもいい。いずれも奇妙奇天烈なコラージュと物語が展開されている。 
 “ひゃくとうおんな”と読む。 『百頭女』と言っても、本の中に本当に百の頭を持つ女の絵が出てくる訳ではない。シュルレアリスムを代表する画家マックス・エルンストが1929年にコラージュ・ロマンと銘打って発表した画集であり小説でもあるような実験的な書物。原題を La Femme 100 Tetes といい、サンテート(100 tetes)はサンテート(sans tetes:無頭)にもなるという綾からも分かる通り、一読して終わりにできるような底の浅い本ではない。
「風景の無意識は完璧になる。」「直径の大きな叫び声が、果物と肉片を棺桶のなかで窒息させる。」「そして画像たちは地面まで降りてくるだろう。」不思議なキャプションとともに誘われるコラージュの数々は謎が解き明かされることもなく、その終わりが始まりへと回帰していく。
  著者のよき理解者であり本書の刊行にも携わったアンドレ・ブルトンが序文の中で「そうした断面のなかには、結局のところ不確実であるような要素、つまり真実らしさという融通のきく条件をみたす以外のどんな目的にも用いることが禁じられているような要素は、なにひとつふくまれてはいない」と指摘する通り、逆説的ではあるけれども本書はそういった文脈の未定義によってこそ読み手の想像世界を解放することに成功している。読み手に応じて全く異なる世界を喚起させる。“静かな炸裂”と評したのは瀧口修造であった。

「シュルレアリストたちは、細部の平俗を恐れなかった。博物学の書物の挿絵や広告写真のような平俗なトリヴィアリズムを恐れなかった。なぜかと言えば、私たちを最も不安や脅威の情緒で満たすものは、神の行うような無からの創造ではなく、かえって既知のものの上に加えられた一つの変形、一つの歪曲であるということを、彼らは直感によって知っていたからである。これがつまり錬金術ということだ。」澁澤龍彦

ノスタルジアをかきたてる漆黒の幻想コラージュ――永遠の女・百頭女と怪鳥ロプロプが繰り広げる奇々怪々の物語。今世紀最大の奇書。瀧口修造・澁澤龍彦・赤瀬川源平・窪田般彌・加藤郁乎・埴谷雄高の六氏が寄せた貴重なテキスト付。M・エルンスト作 · 巌谷 国士訳 ·河出書房新社 1974 河出文庫1996刊。

訳者の言葉を借りるならば、「謎は謎のまま、いわば永劫回帰にゆだねられる。読書(というべきか ?)のあいだに私たちが味わうのは、集中よりもむしろ逸脱である。細部まで明瞭でありながら偶然に支配されているこの銅版画の集合は、私たちの読書をつねに無限の拡散にまかせ、ときには物語の外へとイメージを開放してしまったりもする」からである。

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マックス・エルンスト(Max Ernst, 1891年4月2日 - 1976年4月1日)
20世紀のドイツ人画家・彫刻家。ドイツのケルン近郊のブリュールに生まれ、のち、フランスに帰化している。エルンストは、日本では、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、ジョルジョ・デ・キリコらの人気の高さに比して、やや過少評価されている感があるが、超現実主義(シュルレアリスム)の最も代表的な画家の1人である。作風は多岐にわたり、フロッタージュ(こすり出し)、コラージュ、デカルコマニーなどの技法を駆使している。なおルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリの2人が「アンダルシアの犬」に続いて制作した映画「黄金時代」に、エルンストは俳優として出演している。

[代表作] セレベスの象(1921)博物誌(1926) 百頭女(1929) La femme 100 tetes
ニンフ・エコー(1936) ポーランドの騎士(1954) ブライス・キャニオン [評論] 絵画の彼岸(1937)

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