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2008年8月28日 (木)

音楽の生き残り戦略 6つのビジネスモデル

デビッド・バーン(David Byrne)の音楽の生き残り戦略 あるいは6つの音楽ビジネスモデル

Wired誌のデビッド・バーン(Talking Heads)の音楽ビジネス考察("David Byrne's Survival Strategies for Emerging Artists and Megastars")で、今日音楽ビジネスといわれるものが、音楽を制作することではなく、CDをプラスチックケースに入れて販売することを意味するようになっていて、それもまもなく終わる、としている。

http://toshio.typepad.com/b3_annex/2008/01/david-byrne6.html より

音楽にとってもミュージシャンにとって悪いことではない。これまで以上にリスナーにリーチできる方法がある現在は、むしろミュージシャンにとって多くのチャンスがあるというのがバーン氏の認識だ。
Radiohead、そしてマドンナの動きは、従来の音楽ビジネスが終わりに近いことを示している。
バーン氏曰く、今後は音楽に唯一の方法論があるのではなく、レディオヘッドとMadonnaの例は、"6つある音楽ビジネス"のあり方のうちの2つに過ぎない、という。

さて、その6つに触れる前に、まず、レコード会社は、何を行っていたのか。
バーン氏は、以下のように「レコード会社」の活動をまとめている。

レコード会社の活動

レコーディングセッションの資金提供
製品(CDなど)の製造
製品の流通
製品の売り出し
アーティストの諸経費(ツアー、ビデオ、ヘアメイク)の貸し出しや前払い
アーティストのキャリアやレコーディングについてのアドバイスや指南
経理処理
技術革新により、このうち、レコーディングや製造、流通など、劇的にコストが下がっているものがある。
しかし、レコード会社は、そうしたコストダウンとは関係なく、従来通りの価格を「製品」に上乗せしている。

CDの売上配分

現在のアルバムCD(小売価格$15.99)がどのような売上げ配分になっているのか、確認しておきたい。

ミュージシャン組合 1%  $0.16
パッケージ・製造 5%  $0.80
出版印税 5%  $0.80
小売利益分 5%  $0.80
流通コスト 6%  $0.96
アーティストロイヤリティ 10% $1.60
レコード会社利益分 11% $1.76
マーケティング・プロモーション費 15% $2.40
レコード会社経費 18%  $2.88
小売経費 24%  $3.84
計             100% $15.99
(データはWired誌による)
これを見ると、レコード会社と小売の取り分で60%近くいっていることがわかる。これが、ダウンロード販売になるとどうか。中抜きが行われるが、小売の位置にiTunesが入れ替わっただけ、というのが、バーン氏の見方だ。

アーティスト 14% $1.40
iTunes    30% $3.00
レコード会社  56% $5.59
計      100% $9.99

こうした現状を踏まえた上で、バーン氏は、音楽ビジネスには少なくとも6つのビジネスモデルがあるのではないかとし、6つについてそれぞれ簡単に解説している。

6つの音楽ビジネスモデル

1.Euity Deal

アーティストの活動のすべてが管理され、レコードはもちろん、コンサート、ビデオ、Tシャツ、バーベキューソースまでアーティストの名前で販売され、アーティスト名はブランドになる。
こうした契約をしているアーティストとして、Pussycat Dolls、Korn、Robbie Williamsを挙げている。

2. Standard Deal

いわゆる「標準的な取引」。レコード会社が、録音から製造、流通、プロモーションを一手に引き受け、アーティストはロイヤリティのパーセンテージを受け取るだけ。録音物の著作権についてはレコード会社が永久に保持する。

3. License Deal

「標準的な取引」に似ているが、この場合、マスターテープの著作権と保有権はアーティストが保持し、一定の期間(通常は7年間)レコード会社にライセンスされる。期間終了後は、テレビ番組やコマーシャルなどにライセンスする権利はアーティストに戻る。ただし、レコード会社がマスターを持たないために、マーケティングにあまりお金をかけない可能性は残る。

4. Profit Sharing

利益共有型。バーン氏は、2003年のアルバム"Lead Us Not Into Temptation"でこうした形のビジネスを行ったという。レコーディング費用は、映画のサントラ費用で賄われ、マスターはバーン氏が保持。レコード会社がマーケティングと製造を担当。アーティストのバーン氏は、大手レコード会社の場合と比べて、枚数は売れなかったかもしれないが、一枚あたりのアーティスト取分は通常よりも多かったという。

5. M&D Deal

製造・流通型。
アーティスト側が、製造・流通以外すべてを担当する。アーティストは完全にクリエイティブのコントロールができるがバクチでもある。Aimee Mannはこの方法でうまくやっている。マスターを保持し、ライセンスも直接行うことで、成功すれば何度も何度も収入がある。

6. Self-Distribution

アーティスト自身による流通型。
アーティストがプロデュースし、作曲・作詞され、演奏され、マーケティングされる。ギグやウェブでCDは販売され、Myspaceでプロモーションされる。バンドが、ダウンロード販売のためのサーバを購入またはリースする。まさに、RadioheadがIn Rainbowで行ったのがこのDIY型モデルである。

6つのモデルのどれもが独立したものではなく、それぞれが融合する場合もあるだろう。期間によって、別のモデルを取る場合もある、という。

バーン氏は、最後に、若いアーティストに対して、できる限りの権利を保持するように勧め、こうしたロイヤリティがソングライターの「年金」になるとし、いまはミュージシャンをやるのにすばらしい時代である、と締めくくっている。

"I would personally advise artists to hold on to their publishing rights (well, as much of them as they can). Publishing royalties are how you get paid if someone covers, samples, or licenses your song for a movie or commercial.
This, for a songwriter, is your pension plan."
http://www.wired.com/entertainment/music/magazine/16-01/ff_byrne?currentPage=all
(David Byrne's Survival Strategies for Emerging Artists  and Megastars - Wired Magazine)

音楽ビジネスが、レコード会社を中心に語られる中で、この記事はミュージシャンからの貴重な現状分析であり、戦略論になっている。

David Byrne's Survival Strategies for Emerging Artists  and Megastars - wired.com

DAVIDBYRNE.COM HOME PAGE http://www.davidbyrne.com/

物を売りつける時代が、
そろそろ終わりに近づいているのは、
くりかえすが以下の出来事が多々語っている。

Radiohead、新作アルバムはバンドサイトのみで販売 価格はユーザー次第!(2007年10月)
音楽業界激震続く 今度はマドンナがレコード会社契約から離脱へ (2007年10月)
新作CDの無料配布 音楽業界からは反発も (2007年7月

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