革命や犯罪を論じる一方、ジャズや映画、歌謡曲、落語などを批評した評論家の平岡正明(ひらおか・まさあき)さんが、9日午前2時50分、脳梗塞(こうそく)のため、横浜市内の病院で死去した。68歳だった。通夜は12日午後6時、葬儀は13日午前11時から横浜市西区元久保町3の13の一休庵久保山式場で。喪主は妻秀子(ひでこ)さん。
64年に評論家デビュー。70年ごろからは太田竜や竹中労らと世界革命浪人(ゲバリスタ)を名乗り、新左翼系文化人として注目を集めた。
70年代後半以降は文学や音楽、芸能などに領域を広げ、79年、著書「山口百恵は菩(ぼ)薩(さつ)である」が話題になった。90年に「大歌謡論」で大衆文学研究賞、93年に「浪曲的」で斎藤緑雨賞を受賞。近年は落語論も手がけた。横浜・野毛を活動の拠点に、大道芸や寄席の企画にもかかわった。
著書に「ジャズより他に神はなし」「日本人は中国で何をしたか」「あらゆる犯罪は革命的である」「野毛的」「大落語」「志ん生的、文楽的」など。
山口百恵は菩薩である
著者:平岡正明,講談社,発行:1979年10月10日, 定価:1300円
【目次】
Ⅰ章 恋文,二度三度 / Ⅱ章 説法・百恵百態 /
Ⅲ章 恋文,ひとたび / Ⅳ章 無限抱擁∞
Ⅴ章 問答・百恵秘法 / 全曲事典
「・・・したがって山口百恵の半意識を読んだ。本人も気づいて
いないことをいいあてられなければ音楽評論ではない。その一点
に集中して,彼女にインタビューもせず,映画も見ず,ステージを
聴かず,レコードだけを聴くという方法を選んで,全力を傾けた。
傾けるに価する歌手である。」(あとがきより)
独特の百恵論のため,ファンの間でも賛否両論であるが,ジャス
評論家が真っ正面から山口百恵の“歌”を徹底的に論じたという点
において画期的な一冊である。
「Ⅴ章 問答・百恵秘法」は,著者と宇崎さんとの対談が掲載され
ている。
インパクトの強いタイトルは,以後「山口百恵」のひとつの形容
詞にもなった。
平岡 正明(ひらおか まさあき 1941年1月31日 - 2009年7月9日)
東京府出身の評論家。wikipedia
東京市本郷区に生まれる。京華高等学校卒業。早稲田大学露文在学中、ブントの一員として60年安保闘争に参加し、大学は中退。
やがてブントから脱退して宮原安春らと政治結社犯罪者同盟を結成。1963年、同盟機関誌の単行本『赤い風船あるいは牝狼の夜』を刊行したところ、同書に収録した吉岡康弘撮影の無修正ヌード写真が問題となり、猥褻図画頒布の容疑で警視庁から指名手配を受けたが、不起訴となる。なお、この書籍に赤瀬川原平の「千円札を写真撮影した作品」が掲載されていたことから、「千円札裁判」が起きるきっかけになった。
1964年、現代思潮社から『韃靼人宣言』を刊行して評論家デビュー。1967年の著書『ジャズ宣言』からジャズ評論の分野にも進出。1969年、澁澤龍彦の後任者として天声出版刊『血と薔薇』第4号を編集。
また、谷川雁・吉本隆明の「自立学校」事務局、谷川雁のラボ教育センターなどを転々とする。一方、「犯罪者同盟」以来のアナーキーな行動や著作で、新左翼系文化のカリスマ的存在となる。
1970年には、松田政男、足立正生、佐々木守、相倉久人と「批評戦線」を結成し、雑誌『第二次・映画批評』を創刊した。
また、1970年代に入ると「水滸伝」をヒントにして、太田竜、竹中労らと窮民革命論を唱え、“新左翼三バカトリオ”と呼ばれたこともある。
1970年代後半以降の新左翼の退潮後は、主に、辺境に位置する、文学や芸能の評論の分野で活躍。論評対象は、筒井康隆、五木寛之、山田風太郎、山口百恵、河内音頭、三波春夫、大山倍達など。特に筒井康隆とは個人的にも親交を結び、筒井論も多数執筆している。
また、1975年に山下洋輔が「全日本冷し中華愛好会」を結成すると、上杉清文、奥成達らと主要な論客として参加した。
ただし、評論自体が「ジャズ的なノリ」で書かれることが多く、あまり論理的な文章ではない。平岡の感性でとらえた、「辺境的なもの、マイナーなもの」を、ことさらに称揚しているだけとも受け取れる。
なお、『中国人は日本で何をされたか』『日本人は中国で何をしたか』等のルポ作品も、著している。
1993年、『浪曲的』により斎藤緑雨賞受賞。
1994年4月1日に中野サンプラザで行われた「筒井康隆断筆祭」に参加。その断筆祭を批判した小林よしのりに対して、著書『筒井康隆断筆をめぐるケンカ論集』の収録の、『「ゴーマニズム」の薄甘い正義』で反論した。
大山倍達の極真空手にも入門し、有段者である。
また、横浜の下町・野毛を拠点としたミニコミ、1992年から1994年まで「ハマ野毛」を編集、刊行。野毛に住まう、荻野アンナ・田中優子・種村季弘らが参加していた。また野毛大道芸にもプロデューサー的に関わり、野毛大道芝居では、荻野アンナ、秋山祐徳太子と共に俳優として11年間参加し名演技を披露した。 2004年には野毛の「横浜にぎわい座 芸能ホール」で行われる「うま野毛寄席」で、木戸番役としてデビュー。
大量の著書を出しているが、著作はほとんど文庫化されていない(「山口百恵は菩薩である」(講談社文庫)と、「日本人は中国で何をしたか」(潮文庫)のみ)。2001年に、平岡を評価する四方田犬彦の編集によるベスト集『ザ・グレーテスト・ヒッツ・オブ・平岡正明』が刊行されている。
2007年に刊行された『若松プロ、夜の三銃士』では、1970年代に書かれた「犯罪的革命と革命的犯罪を称揚」する文章を多数収録したり、また新たに執筆された文章で、韓国に帰国後に問題を起こして評判を落としている金嬉老を「それがどうした。彼は屹立する男根である」と擁護したり、「文化大革命は世界同時革命の一貫であった。俺はいまでも文革シンパだ」と記述するなど、平岡の中ではいまだに「革命/犯罪」幻想が生き残っていることが明らかになった。
2009年7月9日午前2時50分、脳梗塞のため死去。68歳没。
著書
韃靼人宣言 現代思潮社 1964
犯罪あるいは革命に関する諸章 現代思潮社 1967
ジャズ宣言 イザラ書房 1969
地獄系24 平岡正明評論集 芳賀書店 1970
永久男根16 イザラ書房 1971
ジャズより他に神はなし 三一書房 1971
今村昌平の映画 芳賀書店 1971
日本人は中国で何をしたか 潮出版社 1972 のち文庫
あらゆる犯罪は革命的である 現代評論社 1972
中国人は日本で何をされたか 潮出版社 1973
犯罪・海を渡る 現代評論社 1973
犯罪あるいは革命に関する諸章 大和書房 1973
西郷隆盛における永久革命 新人物往来社 1973
闇市水滸伝 第三文明社 1973
マリリン・モンローはプロパガンダである イザラ書房 1973
海を見ていた座頭市 イザラ書房 1973
ジャズ・フィーリング アディン書房 1974
歌入り水滸伝 音楽之友社 1974
ヒトラー学入門 革命を志す諸君へ 潮出版社 1975
南方侵略論 アディン書房 1975
スラップスティック快人伝 白川書院 1976
以降の人物を論じている。油井正一、大森忠、佐々木守、ソンコ・マージュ、奥成達、大山倍達、布川徹郎、上杉清文、新宿「バードランド」主人、瓜生良介、赤塚不二夫、池田圭、羽生道雄、神彰
魔界転生 クロスオーバー作家論 TBデザイン 1977.3
戦後日本ジャズ史 アディン書房 1977.4
石原莞爾試論 白川書院 1977.5
一番電車まで ブロンズ社 1977.6
歌の情勢はすばらしい 冬樹社 1978.8
山口百恵は菩薩である 講談社 1979.10 のち文庫
菩薩のリタイア 秀英書房 1980.8
日本の歌が変わる 秀英書房 1980.11
韃靼人ふうのきんたまのにぎりかた 仮面社 1980.10
ボディ&ソウル 秀英書房 1981.1
筒井康隆はこう読め CBS・ソニー出版 1981.3
過渡期だよ、おとっつあん part3(ちょっと左翼篇) 秀英書房 1981.4
他人の穴の中で 秀英書房 1981.5
過渡期だよおとっつあん part 1(美学篇) 秀英書房 1981.9
過渡期だよおとっつぁん part 2(喧嘩論集・格闘技篇) 秀英書房 1981.6
タモリだよ! CBS・ソニー出版 1981.12
歌謡曲見えたっ ミュージック・マガジン 1982.4
お兄さんと呼んでくれ つっぱりオジサン、一年間の夜想曲 情報センター出版局 1983.6
おい、友よ PHP研究所 1983.11
筒井康隆はこう読めの逆襲 CBS・ソニー出版 1983.12
河内音頭・ゆれる 朝日出版社 1984.11
長谷川伸 メリケン波止場の沓掛時次郎 リブロポート 1987.4(シリーズ民間日本学者)
マッカーサーが帰ってきた日 テレビはアメリカ占領軍が埋めた地雷か 青豹書房 1987.9.
香港喜劇大序説 香港中国人によるもうひとつの文化大革命 政界往来社 1987.12
三七全伝南柯の夢(曲亭馬琴作を現代語訳) 創樹社 1987.12
国際艶歌主義 時事通信社 1988.4
官能武装論 新泉社 1989.2
清水次郎長の明治維新 激動期に立ち向かう〈男の志〉とは 光文社 1989.7
大歌謡論 筑摩書房 1989.8
美空ひばりの芸術 ネスコ 1990.6
新内的 批評社 1990.12
筒井康隆はこう読めの報復 大陸書房 1990.11
ジャズより他に神はなし 三一書房 1991.11
浪曲的 青土社 1992.7
風太郎はこう読め 山田風太郎全体論 図書新聞 1992.12
平岡正明オン・エア/耳の快楽 毎日新聞社 1992.12
平民芸術 三一書房 1993.11
横浜的 1993.12
大山倍達を信じよ ゴッドハンド本紀 秀英書房 1994.9
筒井康隆断筆をめぐるケンカ論集 ビレッジセンター出版局 1994.9
ヨコハマB級譚 タウン誌『ハマ野毛』アンソロジー(編) ビレッジセンター, 1995.2
大道芸および場末の自由 解放出版社 1995.5
横浜中華街謎解き 朝日新聞社 1995.9
梁石日は世界文学である ビレッジセンター出版局 1995.12
プレンティ・プレンティ・ソウル 平岡正明ジャズ論集 平凡社 1995.12
清水次郎長伝 第七才子書虎造節 青土社 1996.3
変態的 ビレッジセンター出版局 1996.7
皇帝円舞曲 第1-5部 ビレッジセンター出版局 1996-97
中森明菜/歌謡曲の終幕 作品社 1996.7
三波春夫という永久革命 作品社 1996.11
ジャズ的 毎日新聞社 1997.1
野毛的 横浜文芸復興 解放出版社 1997.2
座頭市 勝新太郎全体論 河出書房新社 1998.2
マイルス・デヴィスの芸術 毎日新聞社 1998.10
黒い神 毎日新聞社 1999.6
江戸前 日本近代文藝のなかの江戸主義 ビレッジセンター出版局 2000.3
チャーリー・パーカーの芸術 Music of Bird 毎日新聞社 2000.12
キネマ三國志 アートン 2001.4
ザ・グレーテスト・ヒッツ・オブ・平岡正明(四方田犬彦編) 芳賀書店, 2001.8
大革命論 河出書房新社 2002.3
ウイ・ウォント・マイルス 河出書房新社 2002.12
昭和ジャズ喫茶伝説 平凡社, 2005.10
大落語 法政大学出版局 2005.1
哲学的落語家! 筑摩書房 2005.9 - 桂枝雀論
戦後事件ファイル 赤塚不二夫、安保、三島由紀夫、赤軍、ひばりの死、他 マガジン・ファイブ 2006.4 (平岡正明コレクション)
志ん生的、文楽的 講談社 2006.6
日本ジャズ者伝説 平凡社 2006.7
平岡正明のDJ寄席 愛育社 2006.10
アングラ機関説 闇の表現者列伝 マガジン・ファイブ, 2007.1 (平岡正明コレクション)
毒血と薔薇 コルトレーンに捧ぐ 国書刊行会, 2007.7
ヨコハマ浄夜 愛育社 2007.10
シュルレアリスム落語宣言 白夜書房 2008.2
若松プロ、夜の三銃士 愛育社 2008.2
黒人大統領誕生をサッチモで祝福する 愛育社 2008.11
昭和マンガ家伝説 平凡社新書 2009.3
共著
水滸伝 窮民革命のための序説(竹中労との共著)三一書房 1973
晩酌の思想(白石かずこ,奥成達との共著)住宅新報社 1976
日本ジャズ伝私家版 モカンボセッションから冷し中華祭りまで (清水俊彦,奥成達との共著) エイプリル・ミュージック 1977.7
どーもすいません 平岡正明・上杉清文対談集 白夜書房 1981.12
俗物図鑑の本 全世界おおむね40億人の俗物に贈る(共著) 郡雄社出版、1982.1
団鬼六・暗黒文学の世界(岡庭昇との共著) 三一書房 1982.10
天覧思想大相撲 平岡正明,上杉清文対談集 拡大差○別篇 秀英書房 1983.8
高級芸術宣言 付・総合商社HAND-JOEの歩み 高級芸術協会著(南伸坊、末井昭、巻上公一、赤瀬川原平、糸井重里ほか) JICC出版局 1985.5
電撃フランク・チキンズ(四方田犬彦との共著) 朝日出版社 1985.8
武道論(大山倍達との共著) 徳間書店 1992.10
筒井康隆の逆襲 言論の自由を圧殺しているのは誰か(編著)現代書林 1994.2
幸森軍也・薄井ゆうじ・早川玄・梁石日・岡庭昇・荻野アンナ・みなみあめん坊・山下洋輔
中国水滸伝・任侠の夢(黄波との共著)日本放送出版協会 1996.4 (世界・わが心の旅)
DJ(佐久間駿との共著) アートン 2001.9
映画 出演
俗物図鑑(1982) 筒井康隆原作 内藤誠監督
花と蛇 地獄篇(1985) 団鬼六原作 西村昭五郎監督
他に若松孝二作品(詳細不明)にも出演。
映画制作
太平洋戦争草稿(1974) -元・日本領のミクロネシアを舞台としたドキュメンタリー
風ッ喰らい時逆しま(1979) 布川徹郎監督
秘祭(1998) 石原慎太郎原作 新城卓監督の沖縄映画
CD
赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ・スペシャル・エディション
ブックレットに寄稿。
ジョアン・カエターノ劇場のエリゼッチ・カルドーゾ(新星堂・オーマガトキ)
ブックレットに寄稿。
wikipedia より