« 高松次郎『世界拡大計画』 | トップページ | すべてのすべての存在を容れる堅固巨大な容器である時空 »

2009年9月20日 (日)

自身を見出し得ぬ呻きをいささか違ったかたちでもらす思惟する存在

生成も消滅も一つ同じものである。
この宇宙とその宇宙とあの宇宙は、私と君と彼が、それぞれ異なっているがごとくに異なっていながら、しかもまた、同じものである。無限大も単一な有限も一つの同じものである。
この世界は、神にせよ、人にせよ、これは誰がつくったものでもない。むしろそれは永遠に生きる火として、きまっただけ燃え、きまっただけ消えながら、つねにあったし、あるし、またあるだろう。

「謎かけの箱」「思索の謎の箱」
僕は白い父の黒い子だ。翼のない鳥のくせに天の雲まで飛びあがるのだ。そして僕に会うものには嘆きの涙を産ませ、僕が生まれるときは忽ち空のなかへ消えこんでしまうのだ。
彼が見ているときは、誰も私を見ていない。けれども、彼が見ていないときは彼は私を見ている。そこでは、何か話しているものは話していないし、走っているものは走っていず、私がすべて真実を語っても、そのとき、私は決して信頼されていないのだ。

生と死、覚醒と睡眠「見ているときは見ていない」

Kuloiuma

話すな、と私がいえば、君は私の名を話さなければならない。けれども、君はどうしても話さねばならぬというのか。その場合もまた、極めて不思議なことに、話している裡に私は私の名を君に話させてしまうのだ。
話すなかれ、しからば、そのときこそ、汝はわが名を話さざるを得ず。
「沈黙」「煙」
去れ、といわれても、君が君であるかぎり、俺は君から立ち去ることはできない。俺の悩みは、君の心のなかを、この俺のみがその思いはじめからおわりまでのすべてをあまりに深く知りつくしすぎているばかりでなく、絶えず君に従っている家臣の俺のほうが君より大きいことがあまりに多すぎることだ。その悩みを取り除く方策はひとつしかない。君が俺の国へくれば、君とともに歩くことを俺はやめるばかりでなく、また、君も君であることをやめてしまうことになるのだ。
ここに一つの部屋がある。光も闇も、存在も虚無も、その部屋の住者だが、その不思議な部屋をすぐ外から絶えず覗いている不気味なものがまたいる。そのすぐ外にいつづけてこちらを覗いているものは、さらに不気味なことには、本体と同一なままでいるときが最も少なく、本体より小さいときより、大きいときが最も多いのだ。
ただ有るもののみ有る。何故なら有は有るが、無は有らぬゆえに。
何ものも有らぬ。有るにしても、何ものも知り得ない。たとい知り得るにしても、それを何人も他の人に明らかにすることは出来ないであろう。それは事物が言葉ではないためであり、また何人も他の人と同一のものを心に考えるからである。

言説は行動の影である。
「言葉が存在の影である。とともにまた、存在が言葉の影である。」
「退屈と不快」
「苦悩する存在」
「苦悩も退屈すらもまるで示さぬ沈鬱な虚無」
「静の無限大」「動の無限大」

この宇宙に嘗てなく、これからも決してないものを空虚な白紙の上に「創造」するところの、いってみれば、全存在反逆者、を、助けるものこそは、エフェソスの町から放逐されたところのものである。

「無限大の道」「破壊的」「創造的」
「上方」「下方」「一種決定的な過去の持参者」
「心中」「変化」「保障」「担保」「愚かしい愛」
『自分だけでおこなう革命』

「無反省」「無自覚」「自覚的」「有から有を産む」
「有の嘗て見知らぬ新しい未知の虚在を創造」
「非革命的」「人類の死滅」

「創造的虚在であるところの虚体」
「虚在の第一のかたち」
《重力もない》「新しい未知」「未知の原色と原色」
「ひと」「われならざる虚在のわれ」
《精神の処女懐胎》

「肩を寄せず」「策らみの悪魔」「透明純白な心」「自然の刑罰」「自己革命」
「全愚生命」「まったく孤独に考える単細胞」「はじめのはじめ」
「互いに触れあったとき」「触れあい現象」「貪食細胞」「存在の秘密」
「これまでの存在のなかにも、これからの存在のなかにもまったく存しない」
「宇宙はじめて」「自己自身の創造」「単純簡明絶対」《考えさせなく》「吸いとられ果てて」
「生と死の卑小な歴史を超えた新しい存在史‥‥」
「存在史と自然の罠」「予覚」「愚劣の極の《男と女》」《愛の自然な感覚》
「おせっかい」《虚体》《虚体者》『自同律の考究』

存在が思惟するときのひそやかな呟きを聞こう。それはそこに自身を見出し得ない呻きではないのか。

《宇宙者》「自身を見出し得ぬ呻きをいささか違ったかたちでもらす思惟する存在」
「事実」「精神的直接媒酌人」《存在の呻き》《存在同類》「異宇宙」「未出現」「無限存在」「存在せぬ存在」「存在し得なかった存在」「存在する非在」
「死せる兄弟達」《存在から無限存在へ移りゆくことの最初の重力拒否者》《木魂》《心のなかの不快》《究極の無限性》《微塵球》《ものにならぬ未存在》「存在の一員」
「考えることによってのみ、まったく未知をこそ創造する」「全体」「無限」「個」「大暗黒ならざる途方もない何か」「もの」「ある」「ない」「虚在」「虚体」「存在」「非在」「虚無」

1971haniya

埴谷雄高のライフワークになった「死霊」は、『自同律の不快』をめぐる 長編小説である。
著者生前に現代思潮社主宰の美学校講議を20数名で受けた時、探偵小説の手法を使って哲学の命題を描いたのは、ドストエフスキィーの「地下室の手記」「悪霊」からの影響によるもので、根底には政治犯として独房の日々の中でドイツの哲学者カントを読んだ時に抱いた「存在」の命題をつきすすめる事にあった、と本人から聞いた記憶がある。
謎解きによる装置が仕掛けられて、形而上にも形而下にも 犯人は引っ掛かってくる。
作品「死霊」は未完の大作に終ったが、結末の構想は大いなる二つの存在による宇宙の対話となる想定にあった。
小説としての方法は発表当時より半世紀を経て、すっかり古びてしまったけれども、語られている命題の内容は現在も先端的であり、作品化する後継者がいないほどに厳しく「存在」を対象化することへ透徹した世界であり続けている。

美学校 http://www.bigakko.jp/

« 高松次郎『世界拡大計画』 | トップページ | すべてのすべての存在を容れる堅固巨大な容器である時空 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
フォト

22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。