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2009年12月27日 (日)

未来を予測するコンピューターが記録した童話 4

 少年は、泳ぎに泳いだ。しだいにはげしくなる起伏、暗礁と深い谷間……棘のようにつっ立ったている、陸上植物の死骸……それから、丘のてっぺんにかたまっているかすかな白斑……せまってくる海に追いつめられ、よりそって死んでいった陸棲動物たちの骨なのだろうか……

 少年ほ一と晩泳ぎつづけた。途中で三度休み、用意してきた甘いジェリーと、捕えた魚の肉で元気をつけた。だが、スクーターなしでは、十五分と泳いだことのなかった少年ほ、もう手足の感覚がなくなるほど疲れはてていた。それでも、泳ぎつづけ、やっと夜が明けるころに、地面が
 せり上って海面を切っている、、目的の陸地にたどりつくことができたのである。陸地といっても、海面からわずかに塵を出した、周囲半キロ足らずの小島にしかすぎなかったが……
                      
  最後の力をふりしぼって、這い上った。想像の中では、風の音楽をたしかめるために、地面の上にすっくと立上るはずだったのだが、実際に這い上ってみると、世界のすべての重さという重さを、自分の体が一挙に吸い取ってしまったように、ずしりと重く、そのまま地面にへぼりついたきり、身動きも出来ないのだった。一本の指を持上げるだけでも、やっとの有様である。おまけに、レスリング競技で、反則の鯉おさえをやられた時のような息苦しさ。いずれ空中にだって酸素はあるのだからと、たかをくくっていたのだが……

 しかし、待望の風は吹いていた。とりわけ風が眼を洗い、それにこたえるように、何かが内側からにじみだしてくる。彼は満足した。どうやら、それが涙であり、地上病だったらしいと気づいたが‥‥‥もう動く気はしなかった。

 そして間もなく、息絶えた。
 さらに、何十昼夜かが繰返され、海はその小島をも飲込んだ。死んだ少年は、波に浮んで、どこまでも流されつづけた。

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    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
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