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2010年2月 1日 (月)

『変容』(『黄金の驢馬』)

アプレイクス 作

Ga30 

主人公はルキウスと呼ばれるいさかおっちょこちょいな苦い放浪学生である。 魔術を思いのままにしたいとの一心から諸国を遍歴し、とうとう幻術の都チッサリアを訪れ、金貸しロミオの邸宅に泊まる。
「全くこの町にはそれと看て、その姿が本当のものと思えるようなのは何一つなく、みながみなすなわち恐ろしい呪いのため他の形に変えられているに違いあるまい、いま足にぶつかる石くれも人間から固まってな化ったもの、耳に声を聞くその鳥もまた、そのままに羽根を生やされ、苑のかこいの樹々さえがまた葉っぱを出した人間、流れおちる泉も人間が汝附けて化ったのでほあるまいかと思われるほどでした」。
 さてミロオ邸の小間使いフォーティス(運命の意あり)と調子良く情を通じ、気嫌よく町を歩いていたルキウスほ、偶然に、かつての母の親族で、今はこの町の宮家に嫁いだビュラエナ叔母忙出会って、彼女の豪華な宴に招待される。
 ビュラユナによれは、ミロオの妻はあらゆる変身術を自家薬籠中の物として若い男を誘惑する魔女だから、警戒するようにとの話だ。酔払ったルキウスが千鳥足で家路を辿ると、なんとミロオ宅の前で三人の盗賊が門扉を開けようとしているでほないか。彼ほただちに剣の鞘を払い、斬りつけ、三人を殺害する。
 翌朝、ルキウスは市の法廷に呼び出され、群衆の見守るなかで厳重に昨夜の殺人を詰問される。悲欺に暮れるルキウスが三人の屍に掛けられた布を取ると、そこには三つの皮袋しかなく、昨夜彼が斬りつけた傷跡が生々しく残っている。とたんに我慢しきれなくなった群衆の問に爆笑が生じる。裁判ほまったくの茶番で、今日ほチッサリアで一年に一度の笑い神の祝祭日だったのだ。ルキウスは知らずと、道化を演じさせられていたのである。
 ところが、帰宅したルキウスは、フォーティスから事の真相を知らされ、仰天する。ミロオの妻が三人の若者をわが家へ誘き寄せようと魔術を用いたのを、フォーティスの機転で若者たちは生命を救われ、代わりに三つの皮袋がロミオ家へ引き寄せられたのだと言う。
 数日後ロミオの妻が全身に膏油を塗って耳木菟に変身するのをつぶさに覗き見していたルキウスほ、ついに念願の魔法を習えるチャソスか釆たとばかりに、同じように裸体になって塗膏を体中にくまなく塗りたくる。
 ところが、何を間違えたのか、彼はロバに変身してしまう。ロバから人間に戻るには、薔薇の花を食べればよいのだが、それもすぐにはままならない。しかも、おりしもミロオ家を襲った盗賊団の手によって、ルキウスはかつての自分の飼馬とともに、背に重い財宝を積まされて、連れ去られてしまう。
 かくしてルキウスの長い遍歴が始まる。
彼は盗賊団に攫われてきた少女を背に乗せて脱去し、牧場で虐待され、あやうく屠殺されそうになる。飼主の手から手へ、ルキウスの周囲にさまざまな人間喜劇が展開する。彼はそれを物言わぬロバの眼から、意地悪く観察する。
 物語の終わり頃、ルキウスは夢の中に女神イシスの顕現を見て救済を予感する。イシスの祭の際に、パレードに接近し、ついに薔薇の花環に噛みつく機会を得て、またたく間に人間に戻る。
 やがて彼は勤行に励み、ついには女神の密儀を受け、剃髪し僧身となる.魂の救済を得て、ローマで幸福な余生を送ることになる。

Panhighresolution

〔作者とその背景〕
アプレイウス(Lucius Apuleius)
http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/lucius_apuleius_c059.html

北アフリカ・マダウロス出身の帝政ローマの作家。奇想天外な小説や極端に技巧的な弁論文を表した。カルタゴで初等教育を受けアテネで哲学・修辞学を修業した後、イタリア、ギリシア、アジアに旅して、神秘宗教や魔術の知識をえる。若くしてイシス信仰に入り、秘儀を授けられたという。
『変容』には自伝的要素が含まれている。ルキクス「変身物語」の他に、ルキウスがたまたま耳にすることになる多くの物語が枠物語の形をとって描かれている。
『黄金のろば』上下二冊、呉茂一訳・岩波文庫

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