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2010年4月 7日 (水)

『リア家の人々』のモデルになったシェークスピア戯曲

橋本治『リア家の人々』新潮4月号は今インターネットで話題になり、文芸誌ではめずらしい売り切れとなっている。都内のどの図書館でも貸し出し予約がいっぱいとなっている状態である。

【昭和という時代を、日本人は、日本の家族は、このように生きたのだ! 崇高であり矮小でもある人間精神と、その土台である敗戦国の激動を、叡智の人・橋本治が描き尽くす大型長篇。】
http://koinu2005.seesaa.net/article/145472773.html

 『リア家の人々』のモデルになった、イギリスのシェークスピアの作品は「歴史劇」「喜劇」「悲劇」に分かれている。戯曲『リア王』はシェークスピアの四大悲劇のひとつである。

シェークスピアの『リア王』は老いという障害を通して人間的成長と成熟と救済を主題としている。
社会や政治、 家族や絆、愛や忠誠、善や悪などを考えるキーワードとして「老い」は作品の中心にある。権力をなかなか若い世代に譲ろうとしない老境の人。国を持ち統治する自立願望を抱きながら、成就を引き延ばされた子供たち。我侭な父に逆らえず機嫌をとってきた娘たちは、王座に居座りいつまでも財産分与を引き延ばす親に怨みと憎悪を内に含んできた。

老害は引退を決意したとき、自分を愛する度合いによってそれを財産分配しようとする。 自分への憎しみをさえ抱いている者の心に気がつかず、情愛の大きさを言葉で測ろうとした。呆けた詩人のように言葉で愛は表現され、 言葉は心の真実を表現するものと過信した。この愚かさは性格によるものと、長い間権力の座にいた者の傲慢さからきている。御輿の上ばかりに乗っていいも、担ぎ手の心を知るかどうかは「心の鏡」を表してもいる。 耳が痛いことは聞かず、自身にとって好都合のものばかりに飛びつくような老害。それは心の負債を増蓄積させることになる。財産と権力に固執して感情的になり、冷静な物事の客観的な判断や理解ができない。真実を見分ける目も洞察力も失って、見かけだけを信じて表層だけにしか反応できない。 そのような愚かさで無残なありようが、甘い言葉を期待して本物の愛をみすみす失ってしまうことになるのだ。
老いの愚かさと醜さが成熟をもたらす契機であり、成熟こそ達成すべきであり、人間の生きるための通過儀礼として悲劇は語りかける。

シェークスピア四大悲劇
http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/film/shaketragedy.htm

↓全てのあらすじを知りたくない人は以下は読まないでください

King_lear_shakespeare_yoyita

King Lear 
イギリスのシェイクスピア作の戯曲『リア王』 あらすじ

リア王は老歳となり三人娘に王国を譲り、政治の煩わしさから解放されたいと思った。
覇権を譲ろうとしてもなお最高の敬愛を受けたい、そんな気持ちから娘たちにに自分への愛情を試そうとする。
三人娘はオールバニイ公の妻になっているゴネリル、コーンウォール公の妻リーガン、まだ若い少女コーデリア。
年上のゴネリルは言葉ではとても言い表せないほど愛して、自分の命よりも愛しているという口先だけのことを並べ立てた。老王は善んで二分の一の領土をやってしまう。二番目のリーガンも姉に劣らず言葉を並べたてたので、いい娘を持つ身の幸福を感じながら三分の一の領土を分けた。末の娘コーデリアは王に最も可愛がられていたので、姉たちに負けず愛の言葉をかけてくれるものと考えながら待った。しかし本当に優しい娘であったコーデリアは姉たちのように口先だけの言葉を述べることはできなかった。
彼女は自分の義務どおりにそれ以上でもなく以下でもなく愛している。もし結婚したら夫も愛したいから、姉たちの言うような愛を捧げることはできないだろうと、正直にしかも控えめに伝えた。しかし王はこのコーデリアの言葉を高慢だといってひどく立腹した。老いた王はすでに真実と偽りの言葉を見分ける力を失っていた。残った二分の一の領土も二人の姉たちに分けてしまった。

王宮では不公平な分配に朝臣たちも驚いたが、誰ひとり王の怒りを鎮めることはできない。忠臣のケント伯爵はコーデリアのために弁護したが、怒りをかったリア王に追放されてしまった。コーデリアにはふたりの求婚者があった。無一文のまま投げ出されたコーデリアを見て、求婚を取り下げるバーガンディ公とは対照的に、フランス王は虐げられたコーデリアにいっそう愛の炎を燃やしフランス王妃として迎え入れる。

二人の娘のもとに隔月で滞在して、リア王は持成しを期待しているが、すでに滞在前から厄介な隠居老人扱いされていた。長女ゴネリルから冷たい扱いを受ける老王を支えるのが、追放になったものの変装して戻った忠臣ケントだった。冷遇ぶりに腹を立てコーデリアを勘当したことを後悔しながら、泣く泣く次女のリーガンを頼ろうとする。しかし姉からの手紙でふたりの不仲を知り、父に会うまいと夫とともにグロスターの居城を訪れていた。

重臣グロスターにはふたりの息子があった。長男エドガーは正妻の子で、次男エドマンドは愛人の子である。エドマンドは私生児というだけで、世間から不当な扱いを受けていることが気に入らず、兄を陥れて父の領地を手に入れる野心を抱いていた。父殺害をほのめかす手紙を書いて兄からのものと偽って見せると、グロスターは騙されてエドガーを疑い始める。その疑念を深めようとエドマンドは自分の腕に刀傷をつけて、父殺しを思いとどまらせて兄から深手を負ったと騒ぎたてた。情愛に感じ入ったグロスターは、エドガーを勘当してエドマンドに領地すべての相続権を与えた。城を訪れていたコンウォールは、身を挺して親を守った孝行息子に感銘して、エドマンドを召し抱える。

リア王はリーガンにゴネリルの仕打ちを訴えて同情と憤慨を期待するが、姉を庇う言葉と老いた父への非難だった。押し問答をしているとゴネリルが到着して姉妹は父を責め苛む。騎士を25人に減らせと迫るリーガンに、それなら50人を受け入れてくれるゴネリルを頼ると言えば、ゴネリルは5人でも多すぎると返えされる。さらにリーガンは一人でも多いという。政務の煩わしさから解放されて、娘の温かい庇護のもとでの安寧を夢見た老王は「孝行以上の楽しみはない」と言い切った娘たちの真意を思い知る。老いた王にとって、夢と現実の落差はあまりに大きすぎて、今できることは正気を失いながら嵐の荒野に飛び出すことだけだった。

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稲妻と雷鳴が地に響きわたる夜の荒野を、リア王は道化師とともに狂おしく呪いさまよう。
忠臣のケント伯爵はふたりを見つけて小屋の中へと避難させる。小屋の中には父殺しを図った罪で追放となったエドガーがいた。トムと名乗り気が狂ったふりをして追っ手から逃れていたのだった。寒い夜に裸で震えるトムを前にして、正気を失いつつも老王は虚飾をはぎ取った人の本質を見る。リア王を庇おうとしたばかりに、コンウォールに居城を取り上げられた重臣グロスターは忠誠心を忘れず、暗殺される恐れのある王を安全な場所に匿うためにやって来た。コーデリアの嘆願により、父を救い出すべく、フランス軍がドーヴァーまで進軍してきていたのだった。

しかしグロスターはフランス軍と通じていることをエドマンドに密告され、コンウォールとリーガンから拷問を受けた。両目をくりぬかれたあと、すべては孝行息子と信じていたエドマンドの密告によることを知る。主とはいえあまりの非道に、召使いのひとりは決然と公爵に刃向かい、リーガンに背中を刺されながらもコンウォールに致命傷を与える。
絶望のなかで城を追放されたグロスターは、裸のトムに変装したエドガーに出会い、ドーヴァーの断崖の頂上まで案内を頼んだ。死ぬ覚悟を見て取ったエドガーは、平らな地面を断崖の縁といいくるめて父親に身投げしたものと思い込ませる。身投げのショックで気を失ったグロスターをやさしく起こすと、神々の助けで死をまぬがれたことを伝えてエドガーは苦難に耐えて生き抜く決意を促す。

ドーヴァーまで進軍したフランス軍の陣営で、コーデリアは変わり果てた老いた父と再会する。激しい狂乱のあとに正気を失ったリアは、朦朧とした意識のなかでコーデリアへ気づき過去の仕打ちを娘に侘びる。つかの間の平安すらブリテン軍との戦いによって破られて、リアとコーデリアは捕虜になってしまう。

フランス軍に勝利したブリテン軍も勝利の余韻にひたる間はなかった。
ゴネリルは嫉妬心から妹のリーガンを毒殺した。エドマンドは甲冑姿に身を固めた騎士に決闘を挑まれ打ち倒される。瀕死のエドマンドは、決闘後に名を明かした騎士エドガーから、父グロスターの最期の模様を聞かされる。そこへゴネリルが自害したとの知らせが入る。リーガンとゴネリルのふたりに愛されたことをエドマンドは虚しく誇りながら、最期の息でリアとコーデリアに刺客を向けたことを告白する。時すでに遅く絞殺されたコーデリアを死骸を抱いたリアが、よろめきながら現れる。正気を失ったリアはコーデリアの死を嘆きながら、娘が生き返ることを願いながら息を引き取る。三人娘に先立たれたリア家の王も亡くなり、彼ら築いた王宮も地位もすべてが崩壊したのだった。エドガーが悲しい時代の責務を負う心を決めて悲惨な物語は終わる。

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遺伝子を分かち合った血族の虚偽や虚言を読みとれない。嘘にたいして正しい推測判断ができないことは、生きていくうえで大いなる障害となっていく。人の本心を見抜く難しさと、高齢になった栄枯盛衰が産んだ大きな悲劇として描かれている。 虚飾の構造は無意味で救いも出口もない。それは台無しとなる舞台が無意識にも構築されているからであった。

シェイクスピアの悲劇『リア王』(King Lear)全文デジタルテキスト
長女と次女に国を譲ったのち2人に事実上追い出されたリア王が、末娘の力を借りて2人と戦うも敗れる。王に従う道化に悲哀を背負わせ、四大悲劇中最も壮大な構成の作品。
坪内逍遙(1859-1935)譯「リヤ王」 昭和九年發行 シェークスピヤ全集第三十卷

http://web.archive.org/web/20040815000636/www.sm.rim.or.jp/~osawa/AGG/kinglear/kinglear-toc.html

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