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2010年7月 8日 (木)

「金狼」 久生十蘭

未知の人物から「遺産相続の通知」なる手紙を受け取った男女五人──酒場「那覇」に集まったが、酒場の主人・絲満(いとまん)が殺害された事件に巻き込まれ、容疑者にされてしまう。

「……あの<遺産相続の通知>は捜査の方針を混乱させる目的で計画されたトリックだということは、いうまでもありません。あの通知で何人かの人間を殺人の現場へよびよせ、否応なしに殺人事件の渦中へひきずりこんでしまう。それで情況を複雑にし、自分の犯跡を曖昧化し、うまくいったら、自分の罪を未知の人間に転嫁させようという目的のトリックなのですね。……いうまでもなく、<通知>を出した告知人がすなわち絲満を殺した犯人なのですが、そういう場合、その人物は、かならず、その現場へやって来てるものなのです。効果の程度を知っておくことが絶対に必要だからです。……だから、犯人はあの朝<那覇>へ集った五人のうちのだれかだと言えるのです」

お互いに過去の秘密を隠したまま結婚し、お互いに相手のことを犯人だと思い込んでいる久我と葵。検挙の手が迫り来る中、逃避行を決意した二人の運命は…。

「……ただ、たったひとつ情けなく思うのは、あたしたちが過去を偽って結びついていることです。告白し合う機会を、二人ながら、永久に失ってしまいました。互いの胸に秘密を抱きながら、これからいく年も幾年も生活してゆかなければならない。悲しいことだが、しかし耐えてゆくより仕様がないのでしょう。……たぶん、これが二人の宿命なのです……」

強盗殺人事件の真相を描いた推理だけでなく、都会の孤独が結びつけた男女のはかないラブストーリー。犯人に利用されて久我を一途に恋する少女・鶴、完全犯罪が成立してしまう結末と相成って悲壮感をさそう。

青空文庫 「金狼」.久生十蘭
http://www.aozora.gr.jp/cards/001224/card46148.html.

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    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
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