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2010年8月13日 (金)

失われた時と「新しい小説」

『失われた時を求めて』 A la recherche du temps perdu

マルセル・プルースト(Marcel Proust)が生涯をかけて執筆した長編小説。
1908年頃から評論「サント=ブーヴに反論する」を書き出し、そこから構想が広がり小説になった。執筆にあたり外部の騒音を遮るコルク張りにした部屋に閉じこもった。1912年に出版社を探すが長過ぎるために断られ、1913年に第一部「スワソ家の方へ」を自費出版した。全三巻の予定がさらに長大化していった。
第二部「花咲く乙女たちのかげに」はゴンクール賞を受賞。
第四部まで完成したところでプルーストは死去(1922年)。
第五部以降も書きあげていた未定稿を弟らが整理して刊行を引継ぎついだ。
第七部を1927年に刊行して完結となった。

Madeleine_proust

作者の自伝的な作品という要素もあり、少年期の回想や社交界の描写などにプルーストの経験が小説となっている。「失われた時」をテーマにした小説を書く決意をする場面があり作品は円環を描いている。

嗅覚や味覚から過去の記憶が呼び覚まされる心理現象を「無意志的記憶」や「プルースト現象」という。この意識の流れの概念は後に文学上の一手法を表すことになる。「人間の精神の中に絶え間なく移ろっていく主観的な思考や感覚を、特に注釈を付けることなく記述していく文学上の手法」となって「意識の流れ」という言葉が用いられる。意識の流れ手法を用いた代表的な小説は、ジョイスの『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』、ウルフの『灯台へ』、フォークナーの『響きと怒り』などがある。新しい小説といわれるヌーヴォー・ロマン(Nouveau roman)へと発展していった。その技法は「意識の流れの叙述」(ナタリー・サロート)や「二人称小説」(ミシェル・ビュトール)、「客観的な事物描写の徹底」(ロブ=グリエ)など様々だが、読者は与えられた「テクスト」を自分で組み合わせて、推理しながら物語や主題を構築して解明するという前衛的なものへと発展していった。ヌーヴォー・ロマンは党派性が薄いもので、個々の作家は各々の方法論のうちにさらに沈潜して行き商業主義とは相反するものとなりながら深い小説的な言語によってしか到達し得ない思想的な領域を開拓していく。

ヌーヴォー・ロマン(「新しい小説」の意)http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/nouveau_roman_ea12.html
ビュトール/ロブ=グリエ/ソレルス http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_3ba7.html

世界の存在理由と同じ存在理由をもって http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/index.html

『失われた時を求めて』で描かれた意識や時間の流れなどは、小説にとどまらず現代の演劇や音楽や映画へと多大な影響をあたえ続けている。これらをすべて分析していったら、『失われた時を求めて』全巻に及ぶほどテクスト枚挙になると思われる。

プルースト入門 http://beauxtemps.com/proust/index.html

『失われた時を求めて』原文http://proust.tv/

プルーストのこの長編大作は作者によって、推敲がなされてはいない。完結までの経緯をみると、厳密には全巻校正も未然な作品といえる。『失われた時を求めて』全巻を現代的な視点から、「新しい小説」として再構成してもいいのではないかとも考えられる。単なる読みやすい抄訳ではなく、トリュビュートに近い表現解釈もありうるのではないだろうか。

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