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2010年8月28日 (土)

インドの維摩に関する話

昔々インドの大都市に、「維摩」という長者がいました。
仏教徒でしたが出家せず、大きな屋敷で妻子や使用人たちと暮らしていた。
溢れんばかりの才能と情熱と資産を持っていました。
彼はその全てを人助けに使うと固く心に決めていた。

貧しい人には施しを与え、悪人は教え諭し、全ての人に対して向合った導き方をする維摩の人望は天下に轟いていた。

「これまでは色んな人たちを導いて長く続けてきた。
ここで病気で寝込んだという噂を流してみよう。
そうすればきっと心配して、人々は私のところに集まってくるに違いない」

維摩が病気で寝込んだらしいという噂が広まると、あらゆる階層の人々が、数え切れないほど彼の家に集まってきた。
こうして人々を待ち構えていた維摩は、病気を説教を実施して成功をおさめることができた。

「こうして病気で寝ていることで、多くの人たちに仏の教えを説くことができた。
こんな私を仏様は見舞いに来てくれないものだろうか?」

維摩の住むヴァイシャリーの町に来ていた釈迦様は、町外れのマンゴー樹園で、500人の弟子と修行僧8000人、それから32000人の菩薩を相手に説教していた。
維摩の思考をテレパシーで察知した世尊は、一番弟子のシャーリプトラ(舎利佛)に伝えた。

「なあ、維摩詰(ヴィマラキールティ)が見舞いに来て欲しがっているぞ。
シャーリプトラよ、ちょっくら行ってきてくれないか?」

それを聞いてシャーリプトラは表情を曇らせる。

「釈迦様そうしたいのですが、どうもあの維摩が苦手なんです・・・
以前に私が林の中で瞑想にふけっている時に、因縁をつけられたことがありましてね。
座っている私のところにやってきていうのですよ。
《何をこんなところで引き籠っとるんか、修行はただ座り込んでおればよいというものではないぞ。社会生活をこなしながらも、心の安定を失わないようにするのだ》
・・・それで一言も反論できなかったんです。すみませんが維摩だけは勘弁してください」

一番弟子のシャーリプトラに断られた釈迦世尊は、二番弟子のモッガラーナ(目連)にいいました。

「ではモッガラーナ、お前が維摩の見舞いに行きなさい」

モッガラーナは血相を変えて言い訳を始めた。

「私ですか?! なんと申しますか、維摩とは色々ありまして・・・
 このヴァイシャーリーの街角で、金持達を集めて説法をしていた時に、奴がいきなりやってきて難題をいうのです。
《そんなやり方では全然ダメじゃ。「説法」というのは「法」を説こうとしているのだろうが、そもそも「法」とは何であるのか?
「法」は生き物ではない。生死とは離れている。
「法」は人格主体を持たない。過去未来と断絶している。
「法」は文字ではない。言語を超えたものだ。
「法」はかたちがなく、虚空のようなもの。
「法」は「空」であるが故に議論の対象ともならない。
「法」は美醜といった概念を離れ、増えることも減ることもない。
「法」は生じることも滅することもなく、帰っていくところもない。
「法」は一切の分別を超えたものなのだ。
そのような「法」をお前はいったいどうやって「説く」つもりなんじゃ?
「法」とは説いたり説かれたりするものではなく、示されたり得たりするものでもない。「法を説く」とは幻術士が作り出した幻人に対して説得を試みるようなものじゃ。
そこのところをよく理解して「説法」するのでなければダメじゃ!》
・・・私が集めた金持ちの聴衆は、すっかり維摩の弁舌に聞き惚れてしまったりして、もう私の立場は丸つぶれでした。申し訳ありません。誰か私でない他の人に頼んでください。」

そして難色を示す仏弟子たち 
マハーカッサパ スブーティ プールナ カッチャーナ アニルッダ ウパーリ ラーフラ アーナンダ とつづくのだった。

【超訳文庫】維摩経
東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
http://bunchin.com/choyaku/

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