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2010年9月 7日 (火)

三島由紀夫 『邯鄲』

能『邯鄲』は『邯鄲の枕』の故事を元に作られた能の演目。
三島由紀夫は『近代能楽集』の中に能『邯鄲』を現代風の戯曲に翻案した作品を書いている。邯鄲という里から来た枕で寝て起きると、何もかも馬鹿らしくなってしまうという。

里帰りの坊ちゃま(次郎)と使用人(菊)の久しぶりの再会。不思議な枕は菊の家系が代々宝物にしていたもの。まだ異性を知らぬ独身の次郎はその枕を頭にして眠りについた。
夢の中で次郎は美女と出会い生活をかさね家庭をつくる。夜は遊女たちと戯れて大金を払う、次郎は社長であったことを知らされた。しかし夢の中で生きていない次郎は、粗筋だけのうえにいるのだった。財産を放して政治家となっていくと、独裁者として民衆からとがめられる。彼の人生は架空の夢でしかありえなかった。このままでは『邯鄲』の教訓を果たせないと、邯鄲の里の精霊から忠告をうける。服毒して死んで目が覚めるという筋書きを拒む次郎に、夢の中の人々は虚妄の時を終わらせようとする。
「あんたは一度だって此の世で生きようとしたことがないんだ。つまり生きながら死んでいる身なんだ」それでも死にたくないという、次郎の口へ毒薬が呑まされて暗転。

目が覚めて次郎は、しばらく里を離れないで生きる想いにとらわれる。菊と辺りを見ると、庭の一面に咲く花に新しい朝を迎えるのだった。「井戸の周りにも花がいっぱいだ」「ふしぎだ、ふしぎだ、庭が活き返った。」【終幕】

邯鄲という枕に寝る人は人生がむなしくなり失踪するという話をききつけた主人公が、夢の中で世の中の富と名誉と美女を手に入れる体験をして、「現世のはかなさを知ることになる」教訓がもたらされる。しかし大人になることを常に拒否していたために、何も変わらず目が覚めてしまう。次郎を大人に変えていくものは、夢や過去の教訓ではなかった。主題を活かしながら、展開も台詞も自由自在に変え新しい物語を成立させている。

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