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2010年11月16日 (火)

2010年の三島由紀夫

三島さんとしては、切腹で死ぬというのは願望であり、現実のビジョンだったと思います。
「人斬り」という映画で、三島さんが、切腹シーンを演じられた。その映画の試写の後で三島さんが、自分の切腹シーンを話題にして
「おい、横尾君、生きているか?」と言うので、
「あの映画の中で本当に腹を切って死んだほうが凄かったのに残念ですね」と言ったんです。
すると、三島さんがギョッとして「君はどうしてそういうことが分かるんだ?」と小声で言って呪むんです。
三島さんは、現実と虚構を分離するのではなく、一体化したものとして考えていたのだと思います。市ヶ谷の自衛隊のバルコニーも、三島さんにとつては演劇的空間で人生の最期を飾るフィナーレでしょう。三島さんは、演劇的なものを現実で演じることで、現実を芸術に転倒させ、魂の叫びを表現しようとしたのでしょう。

横尾忠則「文学界」平成22年12月号 座談会【2010年の三島由紀夫】より

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