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2010年11月18日 (木)

『無妙記』深沢 七郎

神経痛持ちの骨董品露天商の老人が隣室の大学生の男の未来を想像する。
やがて自分と同じように年老いて、死んで骨に白骨になると思ったら、、、
白骨になり視点が老人から離れても、白骨たちが京都の町で話し動き生きはじめる。

老人は西大路の大通りに出ると目の前を一台の霊柩車が走っているのが目にとまる。金閣寺の裏の火葬場へ行く市外を乗せて走ってるが、その運ばれている死骸も間もなく白骨になる。霊柩車のあとからタクシーが二台つづいて走っていて、中にいる喪服を着た会葬者たちは、何年か、何十年かたてば白骨になるだろう。いま霊柩車で運ばれている死骸とはわずかの別れだが、別れを惜しんで憂いに沈んだ顔をして乗っている。腕の神経痛の老人は銀閣寺、百万偏行の市電へ乗った。

「電車の中には白骨たちがいっぱい詰まって乗っていた。これから映画を見に行く白骨たちや、夕食の買い物に行く白骨たちや、(わたしの着ているお召の着物や西陣帯はなんと美しいことだろう)と思いながら乗っている白骨たちが顔を合わせたり、電車がゆれて触れそうになったりするが、お互いに黙り込んでいた。」(本文中より)

老人は金を貸した若い男に逆上されて刺される前に、その傷が原因で死んでしまうことを先に書かれてしまう。実際には若い男の母親が借金の算段をしてどうにかなりそうなところで話は終わっているのだったが。
「白骨の母親は」「母親の白骨は」と、借金男の母親の白骨は強調されているが、神経痛の老人と借金男の前に「白骨の」とつくことはない。老人がやがて死ぬことははっきりと書かれているのに。あまり深い意味はないかもしれないが、若い男は近いうちに死ぬわけではないから白骨ではない、人を殺そうとするような奴は今白骨のようであるわけがない、生きているのに白骨に見えるような者達と並べたら白骨にしてしまうわけにはいかない、だから、白骨ではない者に刺される老人は刺されるための肉を持っていなければならない。しかし数年後病気で死ぬ母親だって肉あってこその病気なのだ。

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