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2010年12月28日 (火)

ニーチェとワーグナー

手塚 「ニーチェにとって、ワーグナーというのはやはり運命的な事件でしたね。」
三島 「ええ。<ニーチェ・コントラ・ワーグナー>はおもしろいですね。とくにワーグナー
    は音楽の一小節において偉大であるとニーチェが言っているのは、正確な批評
    ですね。このあいだ、ベルリン・オペラが来たとき、ワーグナーを見て、
    なるほどなあと思いました。」
手塚 「ぼくもあれには、まったく感心した一人で・・・。ニーチェとワーグナーでは
    年齢もずいぶん違いますが、ワーグナーの若い人の誘い込みかたはうまい
    ですね。手紙をみても、じつに気持ちをつかんで離さない。じっさい現物に
    ふれたらまいるでしょうな。」
三島 「じっさいまいるでしょう。ぼくはワーグナーは好きなんです。ニーチェも言う
    ように典型的なデカタンとして好きなんです。ぼくは前にワーグナー論を
    書いたことがあるんですけど、ワーグナーを聴いていると、その一小節
    一小節が愛だとか死だとか野心とかで、そうゆうものがなんの関係もなしに
    並んでいる感じがするんです。そして、そんな関係のないおのおののテーマ
    を統括する原理は何かというと、やっぱり死神の鎌しかないんですよ。
    非常に不気味なもので、世界の音楽の中でも、ワーグナーの死の原理の
    ようなものはないですよ。」

手塚 「なるほどね。ドイツ文学がまた、死の主題がお得意ですね。死神にじゃれるときも
    あるような気がします。それから力というものを重く考える。力は勝つか負けるか
    で、やはり運命とか死に直結しますよね。ニーチェは運命とか永遠を考える
    チャンピオンですから、ワーグナーとそうゆう点でも結ぶ素質は非常に
    ありますね。」
三島 「ええ。ニーチェはビゼーの<カルメン>に感動していますね。ワーグナーと比べて
    <カルメン>がいいというのは、ある意味でめちゃな話ですが、<カルメン>がいい
    というニーチェの気持ちの底には、やはりラテン的なものへの憧れがあったと
    おもいます。ニーチェのラテン的教養、といっても十七世紀以降のフランスの
    教養のことですが、ニーチェはどのくらい興味をもっていたんでしょうか。」
手塚 「それは、だいたいニーチェには脱出癖があって、ドイツ的なものから抜け出そう
    という気持ちがたえずある。パリの大学に留学したいと思ったこともあります
    から。当然フランスに目を向けています。モンテーニュ、ラ・ロシュフコー、
    パスカルなどのモラリスト、スタンダール、メリメ、サンド・ブーウなどを
    読んでいますね。フランス的な快活さ、歯切れのよさ、心理探究などに
    惹かれたんじゃないでしょうか。」

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