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2011年1月25日 (火)

雨の日はソファで散歩

種村 季弘 著
稀代のエンサイクロペディスト、最後の自選エッセイ集。

1 西日の徘徊老人篇(西日のある夏
余生は路上ぞめきに ほか)
2 幻の豆腐を思う篇(すし屋のにおい
幼児食への帰還 ほか)
3 雨の日はソファで散歩篇(永くて短い待合室
素白を手に歩く品川 ほか)
4 聞き書き篇(江戸と怪談―敗残者が回帰する表層の世界
昭和のアリス ほか)

1

種村季弘さんは講師として教室にいたので、著作物より本人から発せられた言動に、かなりの衝撃を受けた記憶がある。
「ぺてんに引っかかる人は概して制服の先にひと続きに人間を見ている。引っかける人は、制服の先には何もなく中身はがらんどうであることを弁えている」
『吸血鬼幻想』『怪物の解剖学』『ぺてん師列伝』『山師カリオストロの大冒険』『詐欺師の楽園』といった本には、香具師ぺてんなどについての記述が大らかに書かれている。浮浪児の本漁りについては『大言海』を読むために闇市の本屋に毎日通ったことがあるといい。
破天荒な思考行動をする焼跡派という世界のアナーキーさの実用を教わった。

惜しまれつつ世を去った稀代のエンサイクロペディストが最後に編んだ自選エッセイ集。老いと死の予感を抱きつつ綴ったキラ星の如き文章には絶妙な味わいがある。昨夏にちくま文庫入りして持ち歩いて読んでいる。この最後の本は四部構成をとって編集された。
「西日の徘徊老人篇」は、酒を飲んだり西に東に温泉に浸かったりする日々が語られる。「幻の豆腐を思う篇」は、本物の豆腐を求め歩く回想が続く。「雨の日はソファで散歩篇」は、膨大な知識と歩いて得た経験が極上の文章として表出されている。「聞き書き篇」は書くことができなくなりつつあった種村さんの想いを引き出したもの。酒豪遍歴を語りながら昭和の歴史と交差していく「焼け跡酒豪伝」も貴重な話しだ。貴重な話を沢山聞いたものだった。ありがとうございます。と沢山の人たちから言われるのだろうな。

種村季弘は終わらない
http://book.asahi.com/clip/TKY200812210102.html
「たとえば江戸についてのエッセイでこれを出せば普通だというところを、さらにドイツの文献なんかを出してくるからびっくりするわけで」(「大隠は市に隠れる―種村さんが与えてくれたもの」

種村季弘のウェブ・ラビリントス
http://www.asahi-net.or.jp/~jr4y-situ/tanemura/t_index.html

種村 季弘 タネムラ スエヒロ
1933年東京生まれ。1958年東京大学文学部卒業。ドイツ文学者。該博な博物学的知識を駆使して文学、美術、映画など多彩なジャンルで評論活動を続ける。編著書に『東京百話(天・地・人)』『書物漫遊記』『贋物漫遊記』『謎のカスパール・ハウザー』『不思議な石のはなし』など多数。2004年逝去。

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