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2011年1月11日 (火)

今週の本棚・この人この3冊:岡本太郎=横尾忠則・選

 <1>今日の芸術(岡本太郎著/光文社知恵の森文庫)
 <2>日本の伝統(岡本太郎著/光文社知恵の森文庫)
 <3>川崎市岡本太郎美術館所蔵作品集 TARO(岡本太郎美術館編/二玄社)

 岡本太郎は元気だった。いや元気過ぎた。ちょっとついて行けないほど元気だった。岡本太郎の著作ならどれでもいい、開いた頁から飛び出してくるのは元気な言葉ばかりだ。言葉だけではない、彼の絵画も元気よく飛び出してくる。なぜ芸術は元気でなきゃいけないのか。制作する岡本太郎はまるで戦場で闘う戦士だ。銃を筆に変え、軍服を脱ぎ捨てて裸でキャンバスに向って突撃する。銃弾の代りに絵具を叩きつける。

 一体岡本太郎は誰と闘っているのか、どうも我々には見えない敵らしい。ところで画家は闘う存在なのだろうか。その昔、前衛という言葉が生きていた時代の芸術家は確かに闘っているように見えた。過去の美意識や表現や理念を否定して、「現在」とも闘っていた。だけどそんな時代はいつしか終っていた。

 そして振り向いた時、相手もいないのにたった独りで闘っている戦士がいた。岡本太郎だけにしか見えないその敵は巨大なゴーレムだった。我々には幻視と闘う彼の姿が一人芝居のように見えた。我々と言っちゃまずければぼくと言い直してもいい。ぼくには岡本太郎のような敵は存在しなかった。敵という概念さえなかった。でも強いて仮想敵を想定するならば皮肉にも自分であった。

 彼の敵は彼を認めようとしない美術界であり、社会だった。彼の著書『今日の芸術』には、「うまくあってはいけない」、「きれいであってはならない」、「ここちよくあってはならない」を芸術における根本条件に挙げている。この岡本太郎の宣言は美の秩序を破壊し、否定している。彼の反逆精神は言論界にも一石を投じた。

 当時、彼の芸術三原則に触れた若者の一人だったぼくは大いに戸惑いを感じた。彼の言葉で解放されたというよりむしろ目標を喪失した。この言葉はぼくにとっては猛毒だった。岡本太郎を信じちゃいけないと彼に反撥した。そして彼の芸術も否定した。ところがここでふと思った。実は彼の敵は外と同時に内にもいたのではないかと。それは岡本かの子。母は彼にとって愛の対象であった。だが彼女は彼を振り向いてくれない。そんな母に対する愛と反撥が岡本太郎に、実体があってないような抽象的な社会を相手に闘う芸術家像を自ら創造させたのではないだろうか。それが岡本太郎の「今日の芸術」だったとぼくは思う。

【毎日新聞 2011年1月9日】

Hired

■岡本太郎・横尾忠則・赤瀬川原平
『日本ゼロ年』の出品作家に岡本太郎と横尾忠則を選んだ椹木野衣は「『爆心地』の芸術」の中で、赤瀬川原平の《千円札偽造事件》を現代美術の画期的な出来事だといっている。たしかに、この三人は1960年代を代表する現代アーティストである。
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/blog-entry-434.html

■高松次郎、赤瀬川原 平、中西夏之はハイレッドセンターを組織、一連のハプニング的な試みを電車の中や街頭に、洗濯挟を撹拌行為として表現を美術館や画廊の外へ求めた。思考の過激さを気持よく加速していった。
http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-96af.html

■60年代のハプニングアートをかなり完璧に再現している「アキレスと亀」(2008/北野武)
http://eigasennichiya.blog.so-net.ne.jp/2008-09-27

■ハイレッド・センター「Shelter Plan」 動画
http://video.google.com/videoplay?docid=8553758123332073727#

■反芸術からネオダダへ
http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_ce83.html

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