« 続タルホ語録 | トップページ | 大気の澱が至るところに »

2011年3月25日 (金)

無限に中ぐらいのもの

真実に近づくために、ぼくには直観および言語という貧しい道具しか持ち合せがない。
でもある程度はこれらの道具で十分なのだ。確実性におけるそれらの貧しさは、偶然性における豊かさである。個人として語るべきではない。ぼくの中にいる他者たち、ガラクタ=他者、物体=他者たちを語るがままにすべきなのだ。道具が合理的でないにしても、それらが与えてくれる感動のおかげで、意識の未知の領域を歓びと苦痛をともにジグザグに進む。人は知を持つと同時に強くあることはできない。
                                 
そこに眼差と言葉の孤絶、甘美なる埋没、滅亡の豊饒さを選びとる。矛盾するという危険、そして示すべきいかなる模範すら持たないという危険にある。そこにこそ何かが強烈に生きて、蠢き膨張していると感じる。今ではもはや選択の自由はない。後もどりするには遅すぎる。事物の数々が、ある日、それらのあるがままにあなたの限に示されたとき、それらの凍りつきつつも繁殖してやまない眺めを、ついに見せてくれたとき忘れ去ることはできない。

小さく壮大な、汚ない渡しない、高尚な痔にかかった、この世界、ぞっとするようで爆弾的な、そして節度があってデリケートな、この世界、人間の節度と非節度貰わせてできており、記号の数々に還元され、それら記号を砕き、たやすく限定でき、たやすく重いにできる、この世界、大地、生命、細い枝のある木々、鳥たち、木の葉、慧のたまり、潮の満干、膜をすえたがま蛙、白い花びら、蚊だの蝿、この世界、野獣たちの大軍、べっとりした血、黒く、ひりひりし、光っており、パンの皮のように乾いていってがつがつした種族どもを肥やし、この世界、光の運動と原子のかすかな移動、太陽の爆撃と空間の穴、陪黒、すべてが、文字通りすべてがそこにあり、すべてがぼくを打ち捏ね、ぼくを辱しめうつむけに地面に投げ倒す、この世界、冷たい深淵の空間、飢えた漏斗の空間、時間の諸細部、生化学的諸周期、病気、誕生と死の数々、この世界、天地創造の数々、それら創造の情け容赦もない勢力圏、そこにはけっして何ものも平和をもたらすことはなく、けっして何ものもみずからの上にとどまることはあるまい、そこには微笑はなく、かざされた武器もない、神的そのもの、かつ悪魔的そのもののこの円さ、そこには忌わしいあの問いに対する答えがやってくることはけっしであるまいー 

「で、そのあとは? もっと遠くには? もっとあとでは?」

(ル・クレジオ『物質的恍惚』より)

517eaepokl

★ この本によって、彼の『存在と無』を書いたと言ってもよいだろう。しかしこの奇妙な存在論が目指しているのは、無(人間)の構造に関する解明であるよりもはるかに、人間生命をも包含して永遠に、無時間的に存在する物質という明証事、あらゆる注釈を無用かつ不可能とするていの明証事であって、それについて言えることといっては、「存在」は存在し、「無」さえもなおかつ存在する、ということ、ただもうそれだけなのだ。
(『物質的恍惚』翻訳者 豊崎光一)

『愛する大地(テラ・アマーダ)』J.M.G.ル・クレジオ (1968)
http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/jmg_1968_7827.html

WEB初期の消滅した記録 http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_077f.html

« 続タルホ語録 | トップページ | 大気の澱が至るところに »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
フォト

22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。