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2011年6月27日 (月)

魔法の信じがたい魅惑

 魔法の出発点は魅惑に存する。魔法という語は大多数のものの判断力において混然と、秘密の営為という考えを目覚めさせる。自然の暗い力を目覚めさせたり、死の世界の幻視まで駆使したりできるような。そしてそれは部分的には本当なのだ。

 人間の知性において星雲のように多くの幻想を目覚めさせ、また、幾人かに特に与えられているように思えるこのすばらしい能力の想起を、せめてことばの助けを借りて再現しようという考えを人間に吹き込むのは、単に欲望だけではない。いずれにせよその欲望はわれわれに、世界文学中の宝石であるところの、『千一夜物語』、ペローの『おとぎ話集』、ホフマンの『短編集』そしてとりわけポーの『金のつぼ』『短編集』を与えたのだ。
                                     
 それは、創造物のあいだの関係をあらわにすること、時間とへだたり、そして諸元素の対立をもてあそぶことというだけの例の行為にはとどまらない。むしろそれは半ば歴史的といえる実行の積み重ねであり、これこれの不思議な人物の極めて明確な特技のさまざまであり、魔術師、魔法使い、回教僧、バラモン行者と呼ばれる一連の幽霊じみた人間たち、あの雑多な衣裳部屋であり、あの神秘な獣脂であり、そしてこれらすべての始まりとして、魔法使いの夜宴なのだ。

 さて人間たちの大多数は、このことについての彼らの意見に決着をつけるというやっかいな仕事を引き受けたとしても、その内幾人が、この全体について真に一般的な、真に人間的な観念を明らかにし、または、ことに成功するであろうか?

 この魔術的幻影について彼らが抱いている観念を明晰に定義する大多数にとっては人類の魔術上の典型はすべて、ヒステリーの料理女たちの楽しみである「大アルベールの秘密」に含まれている。そしてはかの連中は考えて見るだけの手間はかけ、「魔術師というものがいたとしたらいったい何をやらかすのかしら?」と自問して見るが結局、魔術師を、まっとうな化学者、更には下頗な手品師と混同してしまうのだ。

 いったいかつてこの世の日常において、「千一夜」の聖地で畠のはしに生えて来るような魔術師というものが、存在したことばあるかどうかをわれわれは知らないのだ。
 今日では、幾人かの子供を除いて、もはやだれも魔術師がいるとは信じない。しかしながらひとつのことが目覚ましい。つまり、これらすべての不思議な説話が死者たちの幻覚にまれにしか触れず、またはあまりに弱々しい触れかたなのでわれわれにはなんら役に立たないという点だ。

 だがわれわれが神の支配と世界の精神的形態との秘密に出会いうるのは、メーテルリンクがその物悲しく残酷な「大いなる秘密」で考究していることにかかわらず、死の探究においてなのである。全くの話、肉体的表面の大いなる没却によって純化され、全く精神的な偉大さに復帰し、この全く原初的な偉大さに戻る知性の持主たちが、事物の起源とその運命の深い秘密に参入できないなどとはありえないことである。

 さて死の中を散歩するその方法を、われわれはすでにもう催眠状態という事実において手に入れているのだ。それはわれわれの内部においてガラスの顔をした下意識を解放し、もうひとつの世界の辺境において自由にはねまわらせてくれるのだ。死が、われわれの魂を彼岸の精神的知覚に敏感にさせながら、眠りの不吉な猿まねから始まるというようなことは確実でないし、また連続的な一連の麻痺状態によって、死が魂を身休から引き離すというのも確かではない。そして想像するのだが、死の中には、限りながらこれは本当に夢なのだろうかと苦悩に満ちて自問している人の不安があるのではなかろうか。気を狂わせような問題だ!

 人間が死の幻覚のめくらめく連発を自由にできないのだったら、基本要素の秩序を転倒させられるなぞどうでもよくなるのは明白である。エジプト人は魂を「生命」の辺境に留めおくことばと能力を心得ていた。人間に対する魔法の信じがたい魅惑は、この不思議な能力に由来する。次に、魅惑は自然のなまの力を捕捉するのに役立ちえたのだ。けれど「魔法」の偉大な徳は、死の征服のうちに存する。

アントナン・アルトー「心霊漫歩」Antonin Artaud

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