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2011年8月24日 (水)

『同時代ゲーム』大江健三郎

語り手である主人公はメキシコ旅行を経て、自分の父親の神話や、歴史を書きだす仕事を受け継ごうと決意した。四国の山奥に建設された村=国家=小宇宙で、語り手と語り手の家族は幸せに暮らしていたのだった。しかし、大日本帝国が二重戸籍は罷りならんとして軍隊を派遣し、併合しようとやってきた。その村で、村人たちはどういう暮らしをしていたのか?そして大日本帝国に、どう戦いを挑んだか?さらに語り手の家族は村から離れてどんな生活を送っていたのか?

村=国家=小宇宙を絶対的に支配しているという「壊す人」、村=国家=小宇宙の神話や歴史を研究していた「父」こと神主、2人組みの天体力学の専門家、「アポ爺」と「ペリ爺」語り手の弟で村の若者である「ツユトメサン」百歳近くにもなるのに、性的な魅力を持ち続ける「オシコメ」二重戸籍を正して大日本帝国に村=国家=小宇宙を取り込む為に派遣された「無名大尉」。
魚屋の「コーニーチャン」 女旅芸人の「カーネーチャン」など、ユニークな登場人物とともに、自殺した双子の妹に対する語り手からの手紙という形式で綴られていく。

Dousedaigemu

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 神主をする傍ら村の歴史や神話を研究している主人公の父。アメリカ大統領とも接触していた主人公の妹。脱藩して川を遡行し、谷間に村=国家=小宇宙を作った創建者たちのリーダーである壊す人。天体力学の科学者であるアポ爺、ペリ爺という愉快な双生児。冬眠機械を作ろうとする鉄工所の主人で旋盤工のダライ盤。壊す人の妻で百歳にもなり、復古運動をし、権力と性的魅力を伴って巨大化するオシコメ。壊す人の対極にある路上の莫迦または気ちがいとしての、尻から眼が覗きペニスの先に藁をくくりつけたシリメ。藩権力に対して一揆を企て、神格化されてメイスケサンと呼ばれることになる亀井銘助。大日本帝国の権力機構に対して奇想天外な計画を立て、のちに牛鬼と呼ばれて祭の習俗にもなる政治思想家の原重治。木から降りん人と呼ばれている、樹木から樹木へとつたわって歩き絶対に地上には降りないという老人。この老人を虐殺したのは村に侵攻してきた大日本帝国軍隊だったのだが、その指揮官である無名大尉。この中隊長は村との五十日戦争でさんざんな目に遭う。(中略)これ以後のとんでもない人物の続出、さらには痛快無比な五十日戦争をはじめとする波瀾万丈の展開には、作者の爆発的な想像力にただ感服するばかりである。
[本から本へ]筒井康隆(作家)
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長大な村=国家=小宇宙の神話と歴史を綴った突拍子もない寓話とアイロニーに満ちた「大人の童話」。現代文明批判が澱みなく続くさまは痛快で「巨人の星」のパロディは秀逸で、梶原劇画は大仰だけのリアリティもない作品だが、大仰をエスカレートさせながら架空の話に思えない展開は見事である。神話をファンタジィーとして消費している場合ではない東日本の「今」の現実があり、長期間の休日には最適の長編傑作。

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