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2012年3月30日 (金)

安部公房作「闖入者」(小説)は戯曲「友達」の原点。

ひとり暮らしの男Kの部屋に、ある晩突然、九人家族が大挙して押しかけ民主主義の名の下に占拠してしまう。Kに対して、時には多数決で、時に暴力でKを奴隷状態にする家族達。
戯曲と違うところは圧倒的に暴力的である。「友達」では家族たちは「友達」としての存在を押し付けがましくアピールされるが、小説では家族はあくまで自分達の権利を主張し続ける「闖入者」である。

「このドラマが、小説「闖入者」と本質的に違うところは、まずそのテーマである。「闖入者」の場合には、ごく単純に言えば、誤解された民主主義、もしくは多数という大儀名分の機械的拡大解釈に対する、諷刺がそのテーマの中心におかれていたと言ってもいいだろう。(中略)
この小説をもとにしたドラマ「友達」では、テーマはかなり次元を異にしている。題名の変化がしめしているとおり、「闖入者」が、「友達」に変質したわけである。(中略)
非常な多数決原理で襲いかかった「闖入者」たちが、こんどは、親愛なる同朋として、「友情」の押し売りをはじめたというわけだ。プロットには共通性があるが、テーマはすっかり変質してしまった。「闖入者」を「友達」という、いささかトボケた題名に変えることによって、私は偽似共同体のシンボルに対する、われわれの内部の弱さと盲点を、その内部からあばいてみようと考えたわけである。」(友達「闖入者」より (1967.2頃)安部公房全集020/新潮社)
http://www.shinchosha.co.jp/book/112107/
短編『闖入者』(『水中都市・デンドロカカリヤ』収録

Tomodachi

戯曲『友達』安部公房
独身31歳の商社マンの部屋に9人の家族(祖父、父母、3人の息子、3人の娘)が突然押しかけ勝手に上がりこむ。男は警察に「不法侵入だ」と訴えるが、「家族」の堂々たる振舞いのせいで信用してもらえない。隣人愛の大切さや共同生活の重要性を男に説きながら「私たちは、ただひたすら善意から、君の財産を安全に管理して差し上げる義務を感じたまでのことだ」という。口達者な「家族」は、心配して訪ねてきた男の婚約者に対しても甘言を弄して、男との仲を裂こうとするばかりか、彼女の兄を言いくるめ「仲間」にしてしまうのだった。
すっかり「家族」のペースで進展されて、どうにもできない男は家を出ることを考えるが監禁されてしまう。「家族」の「隣人愛」が通じない男は結局のところ死刑にされてしまう。男に恋していたふしもある「家族」の「次女」は食事で毒殺した後、「さからいさえしなければ、私たちなんか、ただの世間にすぎなかったのに」とつぶやいた。

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