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2012年10月 5日 (金)

『サラジーヌ』バルザック

ある夜会に女をつれて行った語り手が、その家の富を作った謎の老人の来歴について語る。
若い彫刻家サラジーヌが美しい歌手に惚れた。庇護者などに阻まれて恋は燃え上がるが、歌手には言えない秘密があった。苦闘の果てに歌手に会うことに成功したが、歌手は実は男だった。恋に破れて男は殺される。老人はその歌手のなれの果てだった。

サラジーヌと其の恋に肩入れする語り手、その外にそれを読んで恋を思う読者がいる。まさに三重構造をバルザックは狙って『サラジーヌ』を書いている。恋の不可能性を語りながら、恋の至高性、恋を求めずにはいられない人間を描いた。小説は知の豊富さやイデオロギーやシニカルな批評眼の披露目の場ではない。過激なサラジーヌの悲恋と凡庸な語り手の卑俗さの中に、読者の現実と切り結ぶものがある。それらの相乗効果が折り重なって恋を忘れ難い物語となってゆく。

Sarraine

バルザック短編小説『サラジーヌ』
http://www.yamashina-mashiro.com/book2/ques.cgi?no=127&mode=qaview&resmode=on&page=0

『この世はあたしにとっては沙漠も同然。あたしって呪われた女ね。仕合せを理解し、感じ、望むように創られていながら、いつも仕合せが逃げていくのを目にする定め。もっともこんなことは世間にはよくある例だけれども。
これだけは憶えておいて頂戴。あなたを騙すつもりはなかったの。あたしを愛することだけはやめていただきたいわ。』

バタイユは『青空』で「わずかな多少の差はあっても、人は誰しも、人生の多様な真実をあばき出してくれる物語や小説に愛着をもつものである。ときには忘我の状態で読まれるこの種の物語だけが、人を運命の前にひきすえる」と述べて「命題に対応するいく冊かの書物の題名」に『サラジーヌ』と以下の作品をかかげている。

- 『嵐が丘』(エミリー・ブロンテ)
- 『審判』(フランツ・カフカ)
- 『失われた時を求めて』(マルセル・プルースト)
- 『赤と黒』(スタンダール)
- 『ウジェニー・ド・フランヴァル』(マルキ・ド・サド『恋の罪』の一篇)
- 『死の宣告』(ブランショ)
- 『白痴』(フョードル・ドストエフスキー)

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