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2014年1月17日 (金)

パンの墓碑

 人々はいった。
「老いたパンが死んだ。かくなるうえは墓碑を造ろう。いにしえの忌まわしい信仰が記憶に残り、みなに疎まれるように」
 文明を奉ずる土地の人々はそういった。
 そうして、白い巨大な大理石の墓碑を立てることにした。墓碑は工たちの手のもとでしだいしだいに高くなり、日没がめぐるたびに、沈む太陽の名残の光に輝く時間が長くなっていった。

 工たちが造るかたわらで、大勢がパンを悼んだ。大勢がののしった。手を止めてパンのために泣けと工たちに声をかける者もいれば、そのような恥ずべき神の墓碑など残すなと呼びかける者もいた。しかし、工たちは休むことなく造りつづけた。

 ついにある日全てが仕上がり、墓碑は海辺の絶壁さながらにその場にそびえていた。そこにはこうべを垂れて首根を天使たちに踏みつけられたパンの姿が彫ってあった。墓碑がしあがったとき太陽はすでに沈んでいたが、夕映えが巨大なパンの姿を番薇色に染めていた。
 まもなく文明を奉ずる人々が打ちつどい、墓碑を見て死んだパンを思い起こして、口々にかの神とその邪悪な時代を呪った。しかし、いくたりかは離れたところでパンの死にそっと涙した。
 そのとき、薄闇にまぎれて森をそっと抜け出し、影のように忍びやかに丘を駆けてくると、パンが墓碑を眺めて高らかに笑った。

ロード・ダンセイニ「五十一話集」より

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