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2016年3月14日 (月)

フリオ・コルタサル 『石蹴り遊び』

フリオ・コルタサル 『石蹴り遊び』
ブエノスアイレス出身で、パリでボヘミアンを気取って暮らす青年オラシオ・オリベイラ。境遇同じ若者たちと「クラブ」と称して、夜な夜な誰かの部屋に集まって、ジャズのレコードをかけて酒を飲み、形而上学的な話題や美術論や文学論を語る。オリベイラにはウルグァイから子連れでパリに出てきたラ・マーガという恋人がいる。待ち合わせ場所を決めず、街角での偶然の出会いを求めてパリの街を彷徨する遊戯めいたデートを繰り返す。しかし赤ん坊の死を契機に破局。ラ・マーガは行方知れずとなる第一部。

第二部、ラ・マーガを探してウルグァイに渡ったオリベイラは、失意のうち帰郷。サーカス団に勤めていた旧友のトラベラーと、その妻タリタを頼る。三人はサーカス団を手放した団長の経営する精神病院で働く。オリベイラは、中庭で石蹴り遊びに興じるタリタの姿にラ・マーガを重ね、精神的に追い詰められていく。
三部151章で構成されている巻頭には「指定表」が記されて、「二通りの可能な読み方のうち、いずれか一方を選択していただきたい」。
「第一の書物は、普通の方法に従って読まれ、第56章で終わる」。「第二の書物は、第73章から始まって、以下、各章末に指定されている順序に従って読まれる」
73‐1‐2‐118‐(略)‐131‐51‐131‐と読んでゆく順番。第一の書物を選択すると、第57章「以後の続編を何の未練もなく放り出してもかまわない」。
すでに読んであるはずの第一部と第二部の各章が、指定された順に読むと、全く別の相貌を帯びてくるのだった。

第二の書物を開くと、読み飛ばしていた挿話が登場人物の意思決定に深くかかわる要因だと明らかになる。今まで読んでいた物語はいったい何だったのか、疑問がわいてくる。
読み捨ててもいい続編の中にモレリという作家の創作ノートが多含まれて、夜のクラブ議論の根底にあるのがモレリの書いた小説だと分かってくる。モレリと思われる老人さえ登場してくる。

行きつ戻りつを繰り返し『石蹴り遊び』は、短い断章と断章の間に挿まれた栞のせいで既読と未読の章をとりちがえ、すでに読んだ章に導かれて、改めて未読の章に戻る迷宮の彷徨するインターラクティブな感覚を誘う。
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