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2016年4月17日 (日)

『ハローサマー、グッドバイ』 マイクル・コーニイ/河出文庫

『ハローサマー、グッドバイ』 マイクル・コーニイ/河出文庫

「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものである」

夏休みをすごしにきた港町で、少年ドローヴは宿屋の娘ブラウンアイズと再会する。戦時下の物資難対策という名目で町には「缶詰工場」が作られるが、政府は他にも何かを企てているらしく、主人公の父ら政府役人と町の住人たちは対立を深めていく。

 ぼくたちはみな、寒さをおそれている――そうした恐怖心は人が生まれつき持っているもので、夜や冬や寒さが及ぼせる害を警告する手段として進化してきたのは疑う余地がない。(P.15)

 恐怖につつまれたぼくは夢を見ているような状態に漂いこんでいて、たちまち自分が裸だということもほとんどわからなくなり、遠ざかっていく伯母の足音もほとんど意識しなかった。そこに横たわっていると、ロリンに抱かれるのを感じ、心に感じる温かさの理由をぼんやりと理解した。(P.20)

「だいじなのは、お話の裏にこめられた意味なんだよ、ドローヴ少年。お話ってのはある目的があって語られるもので、その語られ方にもやっぱり目的がある。お話がほんとかそうでないかなんてのは、どうでもいいことなんだ。それを忘れるなよ」(P.36)

 ぼくはリボンのほうをむいた。動く気配もなく、顔は青白いがおだやかだ。うしろめたく思いながらまわりに目を走らせてから、ぼくはリボンの柔らかい胸に手をのせたが、鼓動も呼吸も感じとれなかった。温もりのかけらすらない……。(P.162)

 寒さに体をむしばまれる中で、ぼくはかわいらしい少女の幻を見た。氷魔に足をつかまえられて、たちまち眠りに落ち、無事に目ざめたけれど、眠っていた記憶もなければ、時間が過ぎたという記憶もなかった少女。
 そして最近の、空っぽの小屋、空っぽの天幕……。 そして昔むかし、ある小さな少年が戸口の階段で、元気いっぱい、しあわせな気持ちで目ざめたことがあった。眠っているあいだ、その少年はきっと息もしていなかったはずだし、心臓も止まっていたはずだ……。
 そのあいだは歳もとらなかったはずなのだ。(P.368)

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恐怖を感じている動物を仮死状態にして助ける。寒さに恐怖を感じるのは、ロリンへの救難信号として獲得された本能。消えた人々はロリンによって救助された。父親たち下級役人はシェルター建設に利用され切り捨てられ、利己的な高官たちが生存できる可能性はない。眠ってるうちに大凍結を乗り切るだろうが、記憶に残ることもありえない。

マイクル・コーニィは長らく絶版状態で、2008 年に河出文庫より復刊、続編の『パラークシの記憶』も2013 年に、完全新訳『ブロントメク! 』が先月出版されたので一気に読んでいる。

 

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