「生物学個人授業」 岡田節人と南伸坊(河出文庫)
生物学の研究内容だけでなくて、魅力的で多様性に惹かれる世界を語られる。細胞は使わない遺伝子も捨てない「不経済」な「宝の持ち腐れ作戦」は、生物の本質を示す。最近のあらゆる一極化や合理化を考え直すことを我々に促す事実。
雑誌『SINRA』での生物学に関する連載を単行本化した『生物学個人授業』電子書籍版。
「DNAは断捨離しない」
今は不必要な機能でも、発現する機会を待ちつつ必要な部分だけが機能して、ips細胞に通じる原理を見つけてる。
イラストレターの南伸坊さんは、ほのぼのとした作風とは裏腹に、生物学の先生へ鋭い疑問をぶつける。
1.「死ぬ」ことはできるが「死んでみる」ことはできない。
2.人間だけが特別の生物と考えたら、エコロジーは生まれない。
3.生き物とはみずからの故障を自らで見つけ、自ら治療するような、しなやかさをもつシステム。しなやかさの見本のような生物がイモリである。
4.発生過程で人為的に邪魔したり、いたずらしたりすることで、ミュータント(突然変異)を観察することができ、発生に関する非常に大切なことが理解された。最も大きな成果は生物の姿、形の成り立ちを支配しているのは遺伝子であることが確実視されたこと。
5.発生の多様性の側面は地球上の40億年という長い歴史、進化の所産。地球上に初めて生物が出現したときの種類は一種類。
6.地球上で一種類から8000万種ともいわれる種の生物が増え、多様化した。そこに、進化の最大の意味がある。
7.生物の分類にはランクがある。最も下からスピーシス(種)、ジーナス(属)、ドライブ(族)、ファミリー(科)となる。
8.化石から過去の生物の遺伝子を知ることは生物学の次の時代の最もエキサイティングな出発点。
9.「プラナリア」という非常に下等な動物がいる。温度が高い土地では無性生殖をするが、温度の低い土地では有性生殖をする。なかには、高温の土地で、生殖器官なしで増えているものもいる。
10.1966年以降、生物学は動物と植物の二界説から、五界説に変化した。
(1)原核生物(2)原生生物(3)菌類(4)植物(5)動物。(2)から(5)までが真核生物。
第12講 絶滅と進化
《例えばトキの話になったりするときに「トキを絶滅から守るべきだ」という説は「民主主義は守られなければいけない」という風な選択の余地のない議論に聞こえてしまう。
学問の話をされる時に「いわゆる非常識」が出るところが魅力なんでした。トキの話になったとき「トキぐらい辛抱せい」という見方もありますよということになった。辛抱せいは、つまり絶滅しても、ということですよ。》
今は不必要な機能でも、発現する機会を待ちつつ必要な部分だけが機能する。地球上に存在してきた、生物界の壮大なお話である。
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