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2017年1月15日 (日)

稲垣足穂『稲生家=化物 コンクール』 (人間と歴史社)

鏡花の草迷宮や折口信夫の稲生物怪録の先行作品と個性的な装丁の小型書。

江戸時代後期の国学者/平田篤胤が記した妖怪物語「稲生物怪録」をモチーフに、稲垣足穂が自家薬籠中のものにした妖怪譚。「懐しの七月」「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」「稲生家=化物コンクール」に、俳人/高橋康雄による解説を併せて収録。(一九九〇年刊)

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「稲垣足穂の描いた「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」の主人公の少年の《僕》は照りつづく暑気を忘れようとして毎日夕方から川辺に出る。原作も、足穂も川にこだわっている様子はないが、筆者はまずは川をキーワードにして作品の構造を解いてみたい。」
「『稲生物怪録』は平田篤胤を通して普及したが、江戸・明治期には貸本屋を介して幾種類かの写本となり流布した。この『『稲生物怪録』を土台にした作品には泉鏡花の『草迷宮』、巌波小波の『平太郎化物日記』、折口信夫の俄狂言『稲生物怪録』があり、新しくは稲垣足穂の一連のヴァリアント山ン本五郎左衛門ものにつながっていく、人気の妖怪譚である。」

稲垣足穂 「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」
僕ガ比熊山ノ古墳ヲ探検シタノハ、 約一ヶ月前、詳シク云ウト 寛延ニ年夏至前後ノコトデアル。・・・ 十七才の当主平太郎が住む麦倉屋敷。 ひと月の間に毎夜様々な妖怪が現れる。 ヘチマだの、漬物桶だの、大量の虚無僧だの、 妖怪のキッチュさもさることながら、 妖怪と云うには神々しすぎる物怪の親玉、 山ン本五郎左衛門と平太郎の交流がうつくしく楽しい。 山ン本五郎左衛門は平太郎に 「用があったら、小槌を振ればいつでもくるからね」といい残し、 小槌を与えて去っていく。 もともとこの話は、 広島県三次(みよし)市の稲生家に伝承される話で、実話であるという。 80年代最初に読んで以来、この小説は秘中の秘、のつもりでいたのだが 最近、読み直したのを機に、なにげなく検索をかけてみると こんなものがある。 さてさてこれは、世代を飛び越え三次の町おこしに登場、 平太郎の子孫をはじめとする三次の民に糧を与えようとする、 山ン本五郎左衛門の愛ある霊力かとも思ったが、 さすがにこうなると これは再び物怪が姿を現したのではないかと感じられる。 しかし、 ・・・タトエ顔ニ触ッテモ、又跳ネ歩イテモ、 ソレ丈ノ話ダト思イ定メテ打ッチャッテ置イタガ、 首々モ手モ次第ニ消エテシマッタ。 以後相手ニナラヌガ一等良イト云ウコトヲ、 僕ハ愈々(イヨイヨ)確カメタ。 という平太郎の言葉通りにしておこうと思う。 注*)書名は、「余ハヤマモトニ非ズ、サンモトト発音致ス」 ということなので、サンモト、と発音されたい。 稲生物怪録より。

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三島由紀夫は『小説家の休暇』で「稲垣足穂氏の仕事に、世間はもつと敬意を払はなくてはいけない」「昭和文学のもつとも微妙な花の一つである」と絶賛。

 その一ヶ月間に日記風に屡述された化物のヴァラエティーの豊富さ、一種ユーモラスな淡々たる重層的描写の巧みさもさることながら、私がもっとも感心したのは、このような単調な魑魅魍魎の出現のつみかさねののちに、最後の夜、
「待タレヨ。ソレヘ参ラン」
 という声と共にあらわれる尋常な裃姿の、しかも身の丈は鴨居を一尺も越す程の、はなはだ正体不明な、山ン本という存在の出現と退去のクライマックスである
 彼は狐狸でもなく、天狗でもなく、いわんや人間でもない。何ものともわからない。源平合戦の時はじめて日本に来たが、
「余ガ類イ、日本ニテハ神野悪五郎ト云ウ者ヨリ外ニ無シ。神野トハシンノト発音致ス」と礼儀正しく説明する。しかし、これでは何者だかはさっぱりわからない。殊に神韻縹渺としか評しようのないその退去の場面は、異形の供廻りを従えて、星座へ消えてゆくのが、ここまで読んできた読者の魂を、確実に天外へと拉して去るのである。 (三島由紀夫『アポロの杯』より)

稲垣足穂『少年愛の美学』は第1回日本文学大賞を受賞。1969年から『稲垣足穂大全』(全6巻)が刊行されて「タルホ」ブームが起きた。

 

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