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2017年1月22日 (日)

『偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ』ジャック・モノー(みすず書房)

『偶然と必然―現代生物学の思想的な問いかけ』ジャック・モノー(みすず書房)

生命(生物)の特性とは何か?

それは、合目的性・自律的形態発生・複製の不変性である。(本書 p.13-14)

生物の構造は、ある機能を果たすために計画的に形作られたものである
形態発生は生物に内在する相互作用によるものである
自分自身の構造に対応する情報を複製し、そして普遍のまま伝達する力がある
タンパク質こそは, 化学機械の活動を一定の方向に導き, 首尾一貫した機能を果たさせ, そしてその機械自身を組み立てるものなのである. これらの合目的的性能は, 突き詰めれば, すべてタンパク質のもつ《立体的特異性》にもとづくのである。
ある生物の合目的的な働きや構造はすべて, それがいかなるものであれ, 原則として, 一個, 数個, あるいは非情に多数のタンパク質の立体的特異的な相互作用に帰せられると言ってよい。
進化は何ら生物の特性ではない。なんとなれば、進化は、生物の唯一の特権である保存機構の不完全さそのものに根ざしているからである。(本書 p.136)

したがって、生物圏における進化は時間的に方向性を持った必然的に不可逆な過程である。この方向は、エントロピーの増大法則、すなわち熱力学的第二法則の命ずる方向と同一である。これは、単なる類似をはるかに超えたものである。第二法則は統計学的考察に基づいているが、これは進化の不可逆性を示す考察と同一のものである。じっさい、進化の不可逆性を、生物圏における熱力学第二法則の一つの表現とみなすことはきわめて正当なことである。(本書 p.136)

インド哲学者松山俊太郎さん(1930 年8月27日 - 2014年5月11日)が「唯識」講義の時に、現代科学の先端に触れて、ジャック・モノー『偶然と必然』を出版したばかりの「みすず書房」が面白いと紹介していた。

『偶然と必然』ジャック・モノー
序文
I ふしぎな存在
自然のものと人工のもの/宇宙プログラムの困難/計画を授けられた物体/自分自身をつくりあげる機械/自己を複製する機械/ふしぎな特性――不変性と合目的性/不変性の〈矛盾〉/合目的性と客観性の原理
II 生気説と物活説
不変性と合目的性とのあいだの優先関係――基本的ジレンマ/形而上学的生気説/科学的生気説/《物活説的目的》と《旧約》/科学的進歩主義/弁証法的唯物論における物活説的意図/批判的認識論の必要/弁証法的唯物論の認識論としての破たん/人間中心主義の幻想/生物圏――第一原理から演繹できない独特の発生
III マクスウェルの魔物
構造的かつ機能的合目的性の分子因子としてのタンパク質/特異的な触媒としての酵素タンパク質/共有結合と非共有結合/非共有結合でつくられる立体的特異性をもつ複合体という概念/マクスウェルの概念
IV 微視的サイバネティクス
細胞装置の機能的首尾一貫性/調節にあずかるタンパク質と調節の論理/アロステリック相互作用の機構/酵素合成の制御/無根拠性という概念/《全体論》と《還元論》
V 分子個体発生
オリゴマー・タンパク質におけるサブユニットの自発的集合/複合粒子の自発的構造形成/微視的形態発生と巨視的形態発生/タンパク質の一次構造と球状構造/球状構造の形成/後成的に《豊になる》という偽りの逆説/合目的的構造の最後の議論/メッセージの解釈
VI 不変性と擾乱
プラトンとヘラクリトス/解剖学的な不変性/化学的な不変性/基本的不変要素としてのDNA/暗号の翻訳/翻訳の非可逆性/微視的な擾乱/操作上の不確定性と本質的な不確定性/開示ではない絶対的創造としての進化
VII 進化
偶然と必然/偶然をひきおこす豊かな源泉/種の安定性という《逆説》/進化の不可逆性と第二法則/抗体の起源/淘汰の圧力を方向づけるものとしての行動/言語と人間の進化/言語の最初の習得/脳の後成的発達過程中にプログラムされた言語の習得
VIII 未開拓の領域
生物学的知識における現在の未開拓領域/生命の起源の問題/遺伝暗号の起源についての謎/もう一つの未開拓分野――中枢神経系/中枢神経の機能/感覚印象の分析/先天性と経験主義/模試の機能/二元論的幻想と精神の存在
IX 王国と奈落
〈人間〉の進化における淘汰の圧力/現代社会の遺伝的衰退の危険/思想の淘汰/説明の必要/神話的個体発生と形而上学的個体発生/物活説的《旧約》と現代人の魂の病いとの断絶/価値と知識/知識の倫理/知識の倫理と社会主義者の理想

付録
1 タンパク質の構造
2 核酸
3 遺伝暗号
4 熱力学の第二法則の意味について

訳者あとがき
http://www.msz.co.jp/book/detail/00428.html#more-a1

著者はまず、古くして新しい問題、生物とは何かという問題をとり上げ、 現代考えられうる最も科学的・客観的な方法でこれにアプローチしようとする。
そして、コンピューターによる何重かのふるい分けの思考実験から、 生物の特徴は不変の再生、合目的的な活動にあるという結論に到達する。
さらに、著者も偉大な開拓者の一人である現代生物学の立場に立って考察を進め、 これらの特性がそれぞれ、核酸とタンパク質に顕現されていることを、遺伝情報の複製・伝達、種々の酵素の驚嘆すべき整然たる構造・機能の説明によって示している。

だが、機械的ともいえるような保守的な合目的的なプロセスのなかに、 進化はどのようにして根を下して、 新しいイノヴェイティヴなもの、創造的なものを生物圏に送りだすのであろうか。
進化の要因は、不変な情報が微視的な偶然による擾乱を受けることにある。
このように偶然に発した情報は、合目的的な機構により、あるいは取入れられ、あるいは拒否され、 さらに忠実に再生・翻訳され、その後、巨視的な自然の選択を経て必然のものとなる。

このような中心思想に立って、教授は生物のうちで最も特異なもの、 約五十万年の昔から思考力の進化を推し進めてきた人類に関する重大な問題に、 大胆な、挑戦的な試論を展開する。
随所で、ギリシャ以来の多くの有名な思想、特に現代に影響力をもつ へーゲル、マルクス、ベルクソン、テイヤールなどの思想が俎上にのせられ、 生気説、物活説の宣告のもとに退けられている。
したがって本書は刊行以来、広く一般の反響を呼び、 左右の思想界から激しい批判と反論を受けている。

ジャック・モノー
Jacques Lucien Monod
1910年フランスに生まれる。1934年Paris大学助教授となる。1945年Pasteur研究所に入り、1954年以後同研究所細胞生化学室長。1957年来Paris大学教授兼任。
微生物の酵素合成の遺伝的制御を研究し、1965年Jacob、Lwoffとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。コレージュ・ド・フランス教授、Pasteur研究所所長を兼ねていたが1976年6月死去。
『宇宙の中に存在するものは、全て偶然と必然の果実である』

『生物学が諸科学の間で占める位置は、周辺にあると同時に中心にあると言えよう』

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