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2017年3月15日 (水)

『三島由紀夫集 雛の宿』文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

戦後文学の華麗なる旗手・三島由紀夫は、実作と批評の両面において、現代日本の怪奇幻想文学興隆にも大きく寄与した天才であった。
「仲間」「切符」「孔雀」などの怪談風短篇から、心霊小説としても異彩を放つ中篇「英霊の聲」、上田秋成、柳田國男、泉鏡花らへのオマージュ、出色の幻想文学論「小説とは何か」まで―「三島由紀夫による怪談文芸入門」と称すべき充実の一巻本選集。

「朝顔/雛の宿/花火/切符/鴉/英霊の聲/邪教/博覧会/仲間/孔雀/月澹荘綺譚/雨月物語について
柳田國男『遠野物語』/泉鏡花/内田百間/川端氏の『抒情歌』について/ポップコーンの心霊術――横尾忠則論/小説とは何か」

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「朝顔」より
「私の妹は終戦の年に腸チフスで死んだ。私は妹を大そう愛していたので、その死は随分とこたえた。妹の死後、私はたびたび妹の夢を見た。夢の中では妹は必ず生きていた。」
 
「雛の宿」あらすじ
大学2年の学年試験終えて「僕」は桃の節句夕方4時ごろ、銀座の町を歩いていた。ふと入った数寄屋橋近くのパチンコ屋で、隣の台におさげ髪の女学生がいた。去年死んだ妹と同年齢の少女に興味を持ち、おぼつかない手つきの彼女に声をかけた。一緒に店を出ると、少女は無邪気に寄りそってきた。神田キヨ子と名乗った少女は、自分の家に「僕」を招いた。

武蔵小金井駅で下りて暗い野道ゆき、キヨ子の家についた。家にはキヨ子の母という初老の女がいて、大きな雛壇が飾られていた。雛祭りにもてなされた膳は灰皿くらいの小さなもので、ピンセットで作ったような料理がミニチュアの椀や皿に並んでいた。白酒に酔ったキヨ子は眠くなり退室した。帰ろうとする「僕」は母親に強く引きとめられて、泊まるように勧められた。案内された部屋には、キヨ子が裸で蒲団に横たわって待っていた。

その後、秋にその家を見に行った時、近所の雑貨屋のおやじから、2人が色きちがい母子だという噂を「僕」は聞いた。神田家の中を覗いて見ると2人は前と同じまま、雛壇の前に微動もしないで座っていた。「僕」はそこを急いで立ち去った。

「花火」より
「A君に伴われて、彼が時たま行く飲み屋に行った。そこへ男が騒々しく入ってきた。その男は、容貌といい年恰好といい、僕と瓜二つだったのである。」
「昔の大将の身代り首というものがある。活動写真のスタンド・インというものがある。他人の空似というのは実際にあることだ。  
そろそろ夏休みがはじまるので、C大学の僕は夏休み中の何か収入のいいアルバイトを探していた。」
「『今思いついたんだが、運輸大臣の岩崎って知ってますか。じっと顔を見つめておやんなさい。そうすれば、あとでたんまりお祝儀が出ます』」

「切符」あらすじ
商店連合会の会合で、秋祭りの御神輿を出すべか出さないか。 洋服屋を営む松山仙一郎は、酒が入って詰まらない事で頭が混沌としている。賛成派の店主と反対派の店主を取り違えて、老人に窘められる。 会合がお開きになり、川でビールでも飲もうと、一同外に出ようとする。

時計屋の谷が部屋の隅に座っていると気付いた。妻の富子の自殺に関係あるが証拠がない。谷から真相を聞き出そうと川へ 向かう途中、近くの遊園地の〈お化け屋敷〉に行くように仕向ける。カメラ屋と薬屋が賛同して、一緒に行くことになった。仙一郎は受付で 10 枚組の切符を渡して、残りを受け取る。そして谷達と「お化け屋敷」の中に入っていく。谷に水死体を模した女 の人形が富子に似ていないか、場内に流れる女の幽霊の声が富子の声に似ていないかと、揺 さぶりをかける。だが谷は仙一郎が期待したような表情を見せない。
馬鹿馬鹿しくなって 谷を残して〈お化け屋敷〉の外に出ると、目の前に富子が向かってくるのを目撃する。 思わず逃げ出す仙一郎は、富子に呼び止められる。叔父さんと叔母さ んが家に来ているから迎えにきたと言う。富子は死んでいなかった。なぜ富子が自殺したと思い込んでいたのか仙一郎には分からない。

富子は帰り道の商店街を歩いているとき 時計店の前で、谷から以前に恋文をもらったが返事をせず、谷の自殺の原因ではないかと告げる。恐怖で固まった仙一郎は、ポケットの切符を数えてみると 7 枚あった。4 人で入ったから、残り6 枚なのに 7 枚だった。

「仲間」より
「お父さんはいつも僕の手を引いてロンドンの街を歩き、気に入った家を探していました。ある晩のこと、あの人に会い、あの人は少し酔っていましたが、蒼白い顔で、『私は永いこと、こんな風に煙草を吸う子供を探していた』というのでした。」

「孔雀」より
「ある晩、いきなり訪ねて来た男が刑事であったのには、富岡もおどろいた。十月二日の未明に、近くのM遊園地で、二十七羽の印度孔雀が殺され、その記事に一種の感動を受けているうちに、明る晩刑事が来たのだった。」

「月澹荘綺譚」より
「以下は私が老人から聞いた話である。勝造が月澹荘の生活に近づいたのは、侯爵家の嫡男の遊び相手としてであった。嫡男の照茂は、何一つ自分の手を汚そうとしなかった。蜻蛉を釣るにしても、勝造に釣らせて、それをただじっと見ている。」

「小説とはなにか」
柳田國男の「遠野物語」の一節を引き合いに出して「ここに小説があった」という。亡くなった曾祖母の葬式に、曾祖母本人が幽霊となって登場する場面を描いた「遠野物語」第二十二節。老女の葬式に人が集まり、喪の間は火の気を絶やさぬ風習で、囲炉裏端で火の番をしていると、裏口から足音がして、亡くなった老女が姿をあらわす場面。
「裾にて炭取にさわりしに、丸き炭取なればくるくるとまわりたり」という一節を激賞して、物語がどれだけ躍動感を得て、生き生きと世界観を展開しているかを述べている。「巻末に収録した『小説とは何か』-自決を直前にひかえた緊張の中で書かれた文学的遺書であると同時に、三島由紀夫による幻想文学マニフェストとして、後続世代に甚大な影響を及ぼした長編エッセイ」新潮社「波」に連載された最終回は昭和45年11月号。

怪談を中心にした短篇小説、エッセイ、評論をまとめたところから、三島由紀夫オリジナル単行本とは違った楽しみがある。

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