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2017年4月 4日 (火)

『超老人の壁』養老 猛司✖️南 伸坊

『老人の壁』: 養老 孟司✖️南 伸坊

<養老 年を取って楽になってくるのは、「鈍くなる」ことなんじゃないかな。感じなくていいことは、感じなくていいんですよ。> 

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第一章 人はいつから老人か
 老人と世間/世間のプレッシャー/機嫌よくしよう/生まれ変わる快感
第二章 忘却の壁
 忘れる楽しみ/耳の話/虫の音/優しい老人/寸足らずの杭/一つの花/血液型を伸ばそう/健康診断
第三章 自然と老人
 消えた野良犬/自然は中立/嫌いなもの/花鳥風月/カラスに教育を/不機嫌社会
第四章 長生きだけが人生か
 老人と猫/照れ隠し/嬉しい変身/飲んだら乗るな/病気と痛み/痛みの番付/意識の仕組み/気になる偶然/似たところを探す/見た目でわかる/一億総じっとしている社会/老人が置かれた場所
第五章 明るい老人
 オレって死んでる?/遺族の人々/介護は空気で/大事な距離感/遠い親戚/薬は飲むな/余白を持つ/複眼で考える/夫婦は直角/家族の顔/名誉と権力/分割の知恵/虫の絵/老人は絵を描こう/すごい馬/老人の壁

<南 やっぱり、本人が楽しいと思ってやる手作業や工夫って、結果がどうこうとは違うんですね。僕はカンタンな絵で有名なイラストレーターなんですが、ものすごくめんどくさそうな描き込むタイプの人、いるでしょ? 点々で、びっちり埋めてくみたいな。でも聞くとそういう人、やっているときに気持ちいいらしいんです。
養老 そう、いまは虫も写真で撮るとピントも合ってすごくきれいに撮れるんですよね。それでも僕は時々、絵を描きます。写真をわざわざ撮って、画像ソフトで絵に変えるんです。そうすると、よく見るんです。
南 そうです、そうです、よく見るとよく見えてくる。
養老 絵だと丁寧に見るから、実によくいろいろわかるんです。そしてこれは、よっぽど暇じゃないとできない。絵がヘタで困るんだけど、でも楽しい。
南 確かに絵を描こうとすると、まず見方が変わるんです。いつもと同じような見方じゃ何にも描けない。普段と違う見方をすると、いろんなことが見えてくる。それが面白い。
養老 自分を変えないといけないというのが。
南 普段は目的があると、そっちに合わせてしまうので、自分を変えるという方向に行かないんですね。
養老 虫をやっていて、やっぱり一番面白いのは、発見です。発見って、自分が変わることなんです。見つける前の自分と、見つけた後の自分は違う。別の人になるんです。> 【機嫌よくしよう】

<養老   生まれつき持っている他の人と違う個性が一番大事だと、親も子どもも思うようになった時代に、僕は教師をやらされていたんですよ。その頃から、教師って軽くなったんですね。教育っていうのは、本人の本質に関係ないものなのに、個性を伸ばすとかいうことになれば、それはもう、教育なんか要りません。みんな本気で考えてるのかねと思ったけど。だからそのときから、学歴は「付けるもの」になったんです。本当の自分に付ける、飾りつけをする。昔は皮肉でそう言ってたのに、今では本当に飾りになった。
 僕は「人を変えるのが教育でしょう」って言ってるんだけど、「そんな恐ろしいこと」と今の先生方は思ってるんです。親に恨まれると思ってるでしょう。個性なんて、みんな生まれつき持ってるんだから、何も教える必要はないので、「上手に飾りつけてくださいね」って教師は頼まれているわけですね。
南 個性個性って、僕らぐらいの年代から一番言われはじめたんです。
養老 そうでしょうね。
南 たとえば「個性的な絵」って、つまり「いい絵」っていうふうに聞こえてるじゃないですか、必らずほめる時につかうから。でも、個性的なやな絵とか、個性的につまんない絵とかありますよね、絵には「いい絵」と「やな絵」があるっきりなのに(笑)、個性的とか個性ってコトバに価値がついちゃったんですね。> 【一つの花】

<南 最近ますます、「健康でいなければいけない」みたいな風潮ですよね。
養老 それをね、年を取ってもそう思ってる人がいるから困るんです。
南 健康で長生きするためには、どうしたらいいですか。
養老 だから、健康な間だけ生きていりゃいいんですよ、長生きってなんですか?
南 あはは、そうですね。
養老 だから、それを今、健康寿命と一致させようって、そんなこと言ってるんですけど、「老人は健康で元気で生きている間はいい」っていうことでしょう。それを短く言えば、「元気でなくなったら、死んじまえ」っていうことじゃないですか。
 これは別に悲しいことでもなんでもなくて、普通にしておくと自然に逝くと思うんですよ。余計なことをするから、ややこしいことになってる。脳死が典型です。人工呼吸器を作ったから、脳死が起こり、脳死の患者さんがいるから、移植が成立する。人工呼吸をやめたら、全部なくなりますよ。
南 そういうことなんですね。人工呼吸器をつけちゃったら、もう取れないね。
養老 だから、ひと言、物事は全部裏表。最初は表がよく見えたから、「このぐらいよくなる」と思ったわけです。ところが今、その裏面が見えてきて、何が起きているのかようやく見えてきた。
南 ほんとうにそうですね。新しい常識ができないとまずい。> 【老人が置かれた場所】

<南 とんとん拍子になんでもできてきた人は、ひと筋に行くのが当たり前になってるわけですよね。だけど、失敗した人は、ほかの道が探せばあるのに気がつく。
 だから、「なんでそんなにその一つのことで一生懸命にそればっかりに生きるのかな」って、思うんですよね。やっぱりうまくいっちゃった人っていうのは、あとで最後のところでそれを自分でわからない限り、何でもかんでも突き進めばいいというふうになっちゃうかもしれませんね。もう、学校をものすごくよい成績で出て、会社に入ってから、なんかにつまずいて自殺しちゃうとかね。「何のために」っていうか、その間もね、楽しいほうがいいのにって思うんだけど(笑)。
養老 そうですね。
南 そういう人は、「楽しいものはあと」にしてるんでしょうね。最初にそういうふうに教えられちゃったからだと思うんだけど。だから、どんどん上がっていく、上に昇っていかなくちゃいけないって。
養老 これは論語の言う通りですよ「之(これ)を知る者は、之を好む者に如(し)かず」って言うけど、好きな人には敵(かな)わないっていうのあるでしょう。でも、最後は「之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」だからね。やってることを楽しんでいる人が、一番いいんだよって。年を取ったら、そうならなきゃって思います。> 【分割の知恵】

<養老 ようするに、世の中の役になんか立たないんです(笑)。それでいいんですよ。修業と同じですよ。修業っていうのは、自分を完成させるための作業ですね。一番いいのはね、比叡山の千日回峰行。あんなものやったって、誰も儲かりいません。GDPが増えるわけでもない。だけど、何が残るかって、本人が残るんですよ。それをやった本人が残るんです。それが「作品」ということです。
 だから、自分が作品であるような、作品としての自分を完成させるつもりで、好きなことをやれば、老人としての時間を本当に楽しめるんじゃないかな。
南 老人の壁を越えると、作品の自分がいる。
養老 自分のことって、意外とわかないですからね。
南 そうですね。
養老 いい老人ってどういう老人だろうね。
南 そうですねえ、ゴキゲンな老人でしょうね。本人も気持ちいいんだから、まわりも楽しいですよね。なんか「まわりにへつらって笑ってる必要なんかねえや」とかってむっつりしてると、実は本人もつまんない(笑)。
養老 にこにこしてりゃいいんですよ(笑)。
南 百歳老人っていうのが、まわりに感謝の気持ちが出てきて、いつもにこにこしているっていう話聞いて、すごい最高じゃんって思ったんです。
 僕にとって老人は、いつも苦虫を噛み潰したようにして、「何も面白いことなんかねえや」っていうもんだと思ってたんですけど。『オレって老人?』ていう本を書いた頃は、よし老人になったら苦虫を噛み潰してやる! とか思ってたんですが、今は、おじいさんになって、にこにこしてさ、まわりに感謝してられたら、すごくいいじゃん、ていう気持ちです。
 もちろんみんながみんな、なかなか、そうなれない事情もあるかもしれないけど、「まわりの世話になりたくない」とかって、「申し訳ない」とかって言ってんじゃなくて、「もう、しょうがないから、世話になるよ」って、笑っていられるみたいなのが、やっぱり一番いいんじゃないかな。世話をするほうだってね、「すいませんね、すいませんね」ばっかり言われてるより、喜んでくれているほうがいいわけだし。
養老 もう、楽しくてしょうがないよ。
南 最高ですね。> 【老人の壁】

<毎日新聞出版発行/本体1,200円(税別)>

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『超老人の壁』養老 猛司✖️南 伸坊

人生の醍醐味は0と1の間にある。人気解剖学者・養老孟司、「本人伝説」の南伸坊のエッセンスが凝縮。何事もデジタル化され便利になった反面、人間が生きづらくなった世の中で、楽しく生きるにはどうしたらいいか。宗教、哲学、アート、自然科学など、多岐なテーマを織り交ぜながら、明るい老人二人が現代社会に警鐘を鳴らす。思索が深まる爆笑対談第2弾。

第一章 老いの距離感
第二章 最後の審判
第三章 絵の東西
第四章 0と1の間
第五章 謎の生態
第六章 現代の問題
第七章 怪しい新世界
第八章 おじいさんの歌

<毎日新聞出版発行/本体1,200円(税別)>

養老/孟司
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。専門は解剖学。1989年『からだの見方』でサントリー学芸賞を受賞。95年東京大学医学部を退官。

南/伸坊
1948年、東京都生まれ。イラストレーター、装丁デザイナー、エッセイスト。赤瀬川原平氏に師事し、雑誌『ガロ』編集長を経て独立。

 

 

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