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2017年7月23日 (日)

『ジャン』プラトーノフ作品集〔岩波文庫〕

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主人公チャガタ―エフが属する砂漠の少数民族名ジャン。母親が一人で生きてゆくように子供のころからしつけて、彼もモスクワの大学に通うようになった。そして故郷に帰って、ジャンを新しい世界に入れようと思った。

故郷には4,50人のジャンがいるらしいが、彼の思いはなかなか叶わない。母は触れれば分かるくらい年老いている。食べ物も飲み物もないに等しい。植物の幹を吸い小動物をかじる。故郷から遠い町に行って食べ物をもって帰ってきても、すぐになくなってしまう。

小学生くらいの少女を彼のそばにおいた。昼間は彼の手伝いをしたが、夜は早く寝かせた。チャガタ―エフの前に少数民族対策としてロシア人がいたが、一時いなくなっていた彼がまた出没して、この少女を日雇いに雇った。だがあまりに醜いのでチャガタ―エフが彼を殺した。チャガタ―エフは苦労に苦労を重ね、病に侵されながらも仲間に食べ物と飲み物を配った。
年月が経つと30人ほどになった仲間はそれから20人、10人になった。少女が仲間の世話をした。砂漠はある期間いるとまた移動する。10人ならいい方か。砂漠のかなたからトラックが来て、少数民族を保護するよう食べ物を置いて行った。
それから2日目、夜のうちに1人、2人と砂漠の影へ姿をけして、チャガタ―エフと少女が残った。チャガタ―エフは、古代世界の地獄の底であるこの辺境に、真の生活を作ろうと思っていたから、苦笑いをせざるをえなかったのである。あとは彼ら自身に地平線のかなたで幸福をつかみとらせるのがいいのだ。

「彼は他人の生命をじかに感じとるのが好きだった。そこには何か、自分自身の内にあるものより、もっと神秘的な、すばらしい、意味深いものが存在しているように思えるからだ。だれかの手を握りしめていることができるという、ただそれだけのことで、彼の健康と意識はずっとよくなることが多かった。」198頁

本書は「粘土砂漠」「ジャン」「三男」「フロー」「帰還」の五篇からなる作品集。本の半分を占める「ジャン」は、プラトーノフの代表作。昔の領主に抑圧され、生きる望みもなく生かされている人達の生活と人間性の回復を描いている。

プラトーノフ作品集〔岩波文庫〕
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b248311.html

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プラトーノフ(Andrey Platonovich Platonov)
Андрей Платонович Платонов Andrey Platonovich Platonov
(1899―1951)

ロシアの作家。本名クリメーントフКлиментов/Klimentov。中央アジアのボロネジに生まれ、鉄道技師専門学校を卒業後、技師として働きながら詩や評論を書いていたが、中編『グラドフ市』(1926)、『エピファニの水門』(1927)、『秘められた人間』(1928)などで特異な作家として注目された。しかし五か年計画と農村集団化の道を歩み始めた祖国は、作家に大きな懐疑と幻滅を抱かせ、そうした疑問を率直に表明した『疑惑を抱いたマカール』(1929)、『ためになる』(1931)などが、社会主義を風刺する作品として激しい批判を浴び、それ以後作品の発表は事実上不可能となった。1930年代にはそのため批評の分野に力を注ぎ、『プーシキンはわれらの同志』(1937)、『プーシキンとゴーリキー』(1937)を発表した。27年から長編『チェベングール』を執筆、29年に一応完成をみるが、活字になったのは作家の死後だいぶたった72年である。それでも彼は『土台穴』(1929~30執筆。87年本国で最初の公刊。完全なテキストは95年)、『初生水の海』(1934)、『ジャン』(1938年執筆。66年公刊)などの代表的作品を、活字になるあてもないまま書き続けた。第二次大戦後も悲運は続き、47年に発表した短編『イワノフの家族』(のちに『帰還』と改題)が、厳しい批判を受け、彼のすべての作品は二度と日の目を見ることのないまま、戦線での負傷が原因の結核で失意のうちにこの世を去った。87年ペレストロイカ以後、初めて本格的再評価と、全作品の完全なテキストの公刊が行われ、現在では20世紀を代表するロシア作家と最高の評価を受けている。[原 卓也]
『江川卓訳『秘められた人間』、原卓也訳『ジャン』(『新集世界の文学 第45巻』所収・1971・中央公論社) ▽安岡治子訳『疑惑を抱いたマカール』(『集英社ギャラリー 世界の文学15』 1990・集英社) ▽原卓也訳『プラトーノフ作品集』(1992・岩波文庫) ▽亀山郁夫訳『土台穴』(1997・国書刊行会)』

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