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2017年10月16日 (月)

創造する力と数百円

天声人語
文芸春秋の社長が先日、全国図書館大会に出席して、「できれば図書館で文庫の貸し出しをやめてほしい」と呼びかけた。出版不況が続くなか、せめて文庫本は自分で買ってもらえないか。そんな思いなのだろう

▼一方の図書館でも、持ち運びやすい文庫は利用者に人気だという。簡単に手を引くことはなさそうだ。出版社のビジネスにしても、図書館のサービスにしても、小さな本が大きな存在感を持っている

▼もともと古典や文芸作品を廉価で読めるのが文庫だった。1970年代に角川書店が映画と組み合わせて売るようになり、娯楽小説が充実してきたと記憶する。もちろん埋もれた良書を再び世に出す役割も健在である。「こんな本があったのか」と驚かされる瞬間は楽しい

▼作家の川上未映子さんが岩波文庫を例にあげ、変わった本の選び方を勧めている。書店の棚の前に立ち、目をつぶる。手を伸ばして指先に触れた最初の本を買い、必ず読み切る。難しそうでも、書名の意味すらわからなくても

▼それが「自分の知らない何かに出合うこと」「自分の意識からの束の間の自由を味わってみること」の実践なのだと書いている(『読書のとびら』)。世の評価を得た作品の多い文庫本ならではの試みだろう

▼そこまでの勇気はないものの、千円でおつりがくる文庫なら、なじみのない分野にもついつい手が伸びる。気づけば積ん読が増えている。それでも新たな出合いを求め、書店に入れば文庫の棚へと一直線なのである。

【朝日新聞】2017年10月16日(月)

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