« 新譜紹介 | トップページ | 背中を伸ばすストレッチ »

2018年4月 9日 (月)

『聖徳太子の密使』平岩弓枝

F2a7222508ca448e85bfd4a72efa269b

聖徳太子(厩戸王子)と海神の娘との間に生まれた王女「綿津見珠光王女(わたつみのたまひかるのひめみこ)」。日本の文化を発展させるために各国の文化を見聞きする密命を受けて、三匹の猫と一頭の馬をお供に難波津から天の鳥舟(あまのとりふね)に乗って冒険するファンタジー小説。
お供する三匹の猫と一頭の馬たち。
猫の一匹目は純白の毛並みを持つ白猫で北斗という。生まれた時から厩戸王子のお傍にいて、王子の読まれる万巻の書をすべて記憶してる博学の知恵猫。天帝を守る七つ星にして、北天をめぐる七星の位置で季節の到来を告げる北斗星、智と勇を持つ、厩戸王子の愛刀、七星剣を与えられて活躍する。
次の猫は三毛猫で紅玉と緑玉と黄玉の三つ珠の首輪をしているオリオン。性格は天衣無縫な優しさで人の心を魅き、当意即妙に機転がきく三匹の中で一番おしゃれな猫。三つの珠は光の当たり具合で虹色に変化する。オリオンは厩戸王子より三つ星の首輪を持っているので、大王家に伝わる天沼矛(あめのぬぼこ)を授かる。
最後は本物の虎そっくりな毛並みが勇ましい顔立ちをした虎猫スバル。腕自慢で猫には惜しい武勇の持ち主。性格は一本気で、少々短気で情にもろい。小ぶりの銀の弓を厩戸王子から授るが矢がない。王子曰く「矢はそなた自身が持って居る。いざという時、この弓を高くかかげよ。屋はおのずから走りて敵を倒すと思え」。
三匹とも猫の姿のままでは、王女の従者として何かと不都合。厩戸王子が蓮の一枝を使って術をかけ、十二、三歳の少年の姿にしてもらう。顔は猫のままで発する声も猫で、住吉の大伸の力で人の顔と言葉を授かりこれで旅の支度は整う。
珠光王女の愛馬「青龍」は百済の国から献上された全身青毛の駒で、物語の過程で実は本物の龍だと分かる。
父親から母親が去る際に残した、九つの乳白色の珠が連なる「龍の珠の連」と倭国から遣わす正使である旨を記載した書状と白銀五百枚を持ち、三匹の猫を従者として、王女は珠光王子として青竜にまたがり飛鳥の地を旅立つ。
住吉大社を経て四天王寺を参り、塩椎翁(しおつきのおきな)と塩椎姥(しおつちのおうな)から天の鳥舟を受け取り、操船を習って食料・水・備品を積み込み、大海原へ漕ぎ出していく。舟が行き着く先々で魔物と遭遇して退治していく。
一行の行く手に立ちはだかるのは、怪蛇、土蜘蛛、魔神、魔女、謎の仙人といった妖怪変化、魑魅魍魎。数多の危難を乗り越えて、遥か西の国に辿り着いた王女を待っていたのは……。血湧き肉躍る興奮と感動の冒険絵巻。
http://www.shinchosha.co.jp/sp/book/124118/

『聖徳太子の密使』もくじ
厩戸王子 ひそかに使を遠つ国々へ向けて旅立たせ給う
珠光王子と三匹の御供猫 流求国にて掖久人を救う
流求国、東の浜に怪蛇あり
珠光王子 林邑国の大難に出会う
魔女ビンティと三匹の血戦
六角島に住む六角仙人の正体
鮫人国は女七、男三 苦悩する黄珠王
此世の楽園、紫金国に女怪の呪縛を解く
師子国王シンラ 大暗黒天の呪を解く
ビジャ王子 父王の仇を討って師子国王となる
天の鳥舟は紅の海に入り、老人に出会う
睡蓮は海をつなぎ、伝説は心を結ぶ

0c760cbd379f4f64b2ca7e725115158e


54a14b47e88e46dfa13c5889c52a5fc6

綿津見珠光王女が珠光王子として諸国を巡る決意したわけがあった。
推古天皇の御世、十二月一日の夜半過ぎ、突如天空に赤気(せっき)が現れた。高貴な女性が肩に沿わせる領巾(ひれ)のように、その赤気は漆黒の天を揺らめいていた。推古天皇の甥で彼女の摂政をしていた厩戸王子は、赤気の正体と禍福いずれの判断を下すべきか、百済出身の天文博士に諮問する。しかし天文博士は赤気についての十分な知識を持っていなかった。

厩戸王子は考える。倭国は暦法や算術など百済や唐から学ぶに完璧な国ではない。学問だけでなく人々の心のより所や政治に必要なもの。和を尊ぶのに重要なのは何か、諸問題を解決するのに百済と唐にだけ頼ってはならない。百済や唐のさらに向こう、大海のはるか彼方の外国(とつくに)に、秀れた知識があるのではないか…。

白羽の矢が立ったのが珠光王女で、彼女は綿津見珠光王女と名が示す、海神(わたつみ)の娘を母に持つ王女。厩戸王子は海にゆかりの深い珠光王女ならば、海神の守護を受けて旅を成功させて、無事に知識・智慧という名の宝を倭国にもたらしてくれると期待した。赤気の謎を解く為に、父の求めるものを探し出す為に、難波津から天の鳥舟に乗船して出航する。

珠光王子と北斗・オリオン・スバルのお供猫一行の航海ルートは倭国の南西方向で、流求国や林邑国、師子国と、現在の沖縄、ベトナム、スリランカ辺りと推測できる国々もあれば、鮫人(こうじん)国や紫金国のように、伝説を基にした作者の創作に属する国々も登場する。
鮫人は中国などで語られる想像上の人種で、人魚のような姿で南海に住み、泣くとその涙が宝石になるという伝え。ラフカディオ・ハーンが『鮫人の恩返し The Gratitude of the Samebito』という作品を残している。

それらの国々に上陸すると、妖怪や魔物に苦しめられている住人がいて、困っている人々を見捨てて置けない王子たちが、化け物退治をしながら、その国の風俗やものの考え方を学んでいく。妖怪や魔物を調伏するのに、王子と猫達が想像を絶するほどの死闘するわけでない、心温まるファンタジー。

『聖徳太子の密使』は「密使」という只ならぬ雰囲気を持つ言葉とは裏腹に、厩戸王子の国造りにかける情熱を受けとめた珠光王子が、正直に爽やかに三匹の猫を思いやりながら成長していく、優しさに満ちた物語となっている。装丁も素晴らしく、挿画は蓬田やすひろ。

B026ff803a634f21a7f5a0b47e6e106c


« 新譜紹介 | トップページ | 背中を伸ばすストレッチ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2018年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
フォト

22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。