『生きてく工夫』南伸坊(春陽堂書店)
NHK出版「きょうの健康」4年間の連載をまとめた(2019年3月号連載終了)、健康テーマに日々の暮らしをユーモアたっぷりに描く。ほっこりイラストも満載。
「ボクは躁鬱の《躁》ばっかりの人なんだよ」と、本人から青林堂の編集を手伝っている時に聞いたことがある。そんな珍しい《躁》体質なんだと、非常に感心した記憶が蘇る本書。
表紙イラストと「できれば、たのしく、のんびり、いきたい」のコピーが本書内容を表している。
独特の手の混んでいない風に見える絵と文で、状況空間を適量に表せるセンスは伸坊さんの境地だと思う。4年間に渡って自身の身体や健康や老化について著された、「生きてく工夫」は面白いだらだら感である。
○ 大股で歩くと良い(ボケ認知症・血流)
○ ため息をポジティブにつく(胸がすく)
○ 日向ぼっこをする(メラトニン・骨密度UP)
身体的な年齢は確かに老人なんだけれど、視覚的な感覚と思いかたが子供に限りなく近い。これは『老人力』の赤瀬川原平さんに通じる、ユーモラスでありながら鮮明な探究することの愉快さと「生きる工夫」に感謝。
冒頭に引用された『シナのある百科事典』によれば、次のように書かれているという。
「動物は次のごとく分けられる。〈a〉皇帝に属するもの、〈b〉香の匂いを放つもの、〈c〉飼いならされたもの、〈d〉乳呑み豚、〈e〉人形、〈f〉お話に出てくるもの、〈g〉放し飼いの犬、〈h〉この分類自体に含まれているもの、〈i〉気違いのように騒ぐもの、〈j〉かぞえきれぬもの、〈k〉ラクダの毛のごく細の毛筆で描かれたもの、〈l〉その他、〈m〉いましがた壷をこわしたもの、〈n〉とおくから蠅のように見えるもの。」
という作り話だろと思う内容は、ボルヘス『神話事典』による創作なのだが、「哲学者フーコーはその列挙によって味わわせる異常さは、出会いの空間そのものが、そこでは崩壊していることに由来している」と惚ける。このボルヘスによる偽書内容をまるまる絵本か、アニメにしたら凄い虚構世界だろうと感じた。
著者プロフィール
南伸坊 (ミナミシンボウ) (著/文)
1947年東京生まれ。イラストレーター、装丁デザイナー、エッセイスト。
東京都立工芸高等学校デザイン科卒業。木村恒久、赤瀬川原平などに学ぶ。雑誌『ガロ』の編集長を経てフリーで活躍中。主な著書に『ぼくのコドモ時間』『笑う茶碗』(共にちくま文庫)、『装丁/南伸坊』(フレーベル館)、『本人伝説』(文春文庫)、『おじいさんになったね』(海竜社)、『くろちゃんとツマと私』(東京書籍)、『私のイラストレーション史』(亜紀書房)などがある。
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