「白い花」「国葬」秋山清
「白い花」秋山清
アッツの酷寒は
私らの想像のむこうにある。
アッツの悪天候は
私らの想像のさらにむこうにある。
ツンドラに
みじかい春がきて
草が萌え
ヒメエゾコザクラの花がさき
その五弁の白に見入って
妻と子や
故郷の思いを
君はひそめていた。
やがて十倍の敵に突入し
兵として
心のこりなくたたかいつくしたと
私はかたくそう思う。
君の名を誰もしらない。
私は十一月になって君のことを知った。
君の区民葬の日であった。
(詩集「白い花」より昭和十九年)
「国葬」秋山清
元帥国葬の日に
私は辞書を引いていた。
南方樹種の名称と学名と用途。
ニューギニアの
モロべ高原には
松林が繁茂するという。
その針葉樹をせんさくしながら
南の島々と
その空とぶ飛行機が脳裏を去来した。
風やみ
竿頭黒布垂れた弔旗を
麦畑のむこうにみた。
秋山清
1904-1988 大正-昭和時代の詩人。明治37年4月20日生まれ。大正13年「詩戦行」を創刊,「弾道」「詩行動」などアナーキズム系の詩誌にかかわる。戦後,金子光晴らと「コスモス」を創刊した。昭和63年11月14日死去。84歳。福岡県出身。日大中退。別名に局(つぼね)清。著作に詩集「象のはなし」「秋山清詩集」,評論集「日本の反逆思想」など。
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