『蜘蛛男』江戸川乱歩
『蜘蛛男』江戸川乱歩
「講談倶楽部」1929年8月から1930年6月まで連載された推理小説。
乱歩「通俗もの」の代表作。
初期は和服姿で犯罪探求者で、猟奇の徒の側面を色濃く残していた明智小五郎は、『一寸法師』で洋装の探偵へのモードチェンジした。本作では洋行帰りを経て、ヒーロー化を深める。以降は異形の怪人たちと対決する正義の味方としてのキャラクターとなる。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1229067
「女事務員募集、十七八歳、愛嬌のある方、美術商接客係り、高給、午後三時より五時まで来談。Y町関東ビル稲垣美術店」
【あらすじ】
東京のY町に開店した小さな美術商「稲垣商店」へ、事務員の募集広告を見てきた里見芳枝は、店長の稲垣平造と出かけて行方不明となった。
稲垣店長の正体は殺人鬼「蜘蛛男」だった。やがて芳枝は石膏像に塗り込められたバラバラ死体となって発見される。芳枝の姉の絹枝も殺害されて水族館の水槽に浮かべられる。
この事件を調べていた私立探偵の畔柳博士と助手の野崎青年は、「蜘蛛男」が芳枝に似た女性ばかりを狙って殺人を行って推測して、警視庁の波越警部と捜査へ乗り出した。
真犯人を暴くなどよりも、犯人の人物像や、犯人の好みの女性の描写において丹念さ、犯行過程を詳細に描いているミステリー。
映画版の演出が、このねちねちした拘り、奇妙なエロチシズムを再現させる。
映画版『蜘蛛男』
監督 山本弘之
脚本 陶山鉄
原作 江戸川乱歩
製作 篠勝三
出演者
藤田進 岡譲司 宮城千賀子
音楽 紙恭輔
撮影 古泉勝男
上映時間 97分
新映画社制作、大映配給で1958年に公開された。
新映画社が制作した最後の映画である。『殺人鬼 蜘蛛男』と『蜘蛛男の逆襲』の2部構成。主演の藤田進は、『一寸法師』(1948年)以来10年ぶりに明智小五郎を演じた。
藤田進 - 明智小五郎
岡譲司 - 畔柳博士
宮城千賀子 - 富士洋子
河上敬子 - 明智淳子
八島恵子 - 里見芳枝、里見絹枝(二役)
舟橋元 - 野崎三郎
風間繁美 - 平田東一
松下猛夫 - 波越警部

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