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2020年7月24日 (金)

『親切な機械』三島由紀夫

京大文学部学生が女子学生を殺害〜求婚を拒まれての兇行

「十四日午前二時四十五分ごろ京都市五條署綾小路巡査派出所前を血のしたたる匕首をもつて歩く青年を同派出所巡査が調べたところ、右は下京区室町通綾小路下る京大文学部史学科西洋史専攻第三学年猪口勉(二六)で、十三日夜一時半ごろ同区室町通松原上る京大文科一年山本徹子(二五)さんを殺害したことを自供、直ちに現場に急行したところ徹子さんが顔面、右耳下等を匕首で突かれ殺害されているのを発見した」昭和23年4月15日付『大阪新聞』社会面記事


事件の犯行理由は猪口が「しばしば求婚したがその都度拒まれて遂に殺意」という痴情のもつれである。


作者が京都に取材したのは24年春から初夏。銀閣寺道近くに住み事件両者の知る、京大生の下宿に2晩泊まって聞き取りしたらしい。


小説では京大生は猪口に対して、徹子殺害をそそのかし「親切な機械」として殺人を教唆している。


犯行現場も銀閣寺道周辺にされた。界隈はまだ森閑としていた地域である。

「このあたりは読書や頭休めの散歩に好適である。夜は閑かで梟の声や銀閣寺の池の方角からものに愕かされた水鳥の叫びを聴くのである」

木山について「大抵の人間を等しなみに馬鹿扱いにしていた」という、典型的な戦後派のニヒリストに描く。


木山は徹子のかつての恋人で、今は別の女子学生と肉体関係を持っている。徹子は好きでもない猪口と交際を始めるが、木山の下宿にも遊びにきて、「ねえ、……私を殺してよ」と迫ったりする。


具体的な「教唆」のシーンは小説にないが、木山はみずから「親切な機械」になって、猪口にこう語るのだ。


「『俺が』ともし俺が言い出すだろう。そのとき俺が要求する自由は、誰かしらんこの地上で俺と対応する人間の自由を抹殺するところに立っているんだ」


「木山勉」のモデルである山口健二はアナキスト運動家となり、過激な思想の「自立学校」を谷川雁たちと創設する。三島由紀夫が昭和24年の段階で、山口健二の資質に関心を示して、小説を書いたのは興味深い。

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