「おやしらず」秋山清
おやしらず 秋山清
夜がしらしらにあけると
ここは越後の国おやしらず。
汽車は海にせまる山壁に息はきかけて走り
人のいない崖下の海岸に
しろい波がくだけている。
あとからあとからとよせてきて
くだけている。
なんというさびしげな名前だろう、
「親しらず」とは。
がらす窓に
ちいさな雨となってふる霧は
日本海のそらと海とをおおい
茫として沖がみえぬ。
秋山清
1904-1988 大正-昭和時代の詩人。明治37年4月20日生まれ。大正13年「詩戦行」を創刊,「弾道」「詩行動」などアナーキズム系の詩誌にかかわる。戦後,金子光晴らと「コスモス」を創刊した。昭和63年11月14日死去。84歳。福岡県出身。日大中退。別名に局(つぼね)清。著作に詩集「象のはなし」「秋山清詩集」,評論集「日本の反逆思想」など。
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