春十首・藤原定家
いつしかとかすめる空の氣色かなたゞ夜の程の春のあけぼの
樓の上のあきののぞみは月のほど春は千里の日ぐらしのそら
春來ても谷のこほりはまだ解けずさは思ひわく鳥の音もがな
匂ひ來ぬまたこの宿のうめの花人あくがらすはるのあけくれ
ほのぼのとかすめる山の嶺つゞき同じきゞすのこゑぞ恨むる
へて見ばや瀧の白糸いはこえて花ちりまじるはるのやまざと
ときはなるみどりの松の一入はにほはぬ花のにほひなりけり
散りまがふ花に山路は埋れぬたれかき分けてけさをとふらむ
龍門のたきにふりこし雪ばかり雨にまがひてちるさくらかな
脱ぎかへむあすの衣の色もをしいたくは馴れじ花のにほひに

『藤原定家歌集・附 年譜』佐佐木信綱 校訂(岩波文庫)
詞の華咲き栄えた新古今集時代に,藤原俊成の子に生まれ,歌人としてまた歌学者として特にぬきんでたのは藤原定家であった.この歌集は,伊勢の旧家来田氏所蔵の古本を底本とし,正徹自筆本,細川幽斎手沢本を参照し,厳密に校訂をくわえたものである.新古今の代表的歌人たる定家の真面目は,本書によって見ることができる.
« 上條淳士の音楽コミック『To-y』唯一の映像化作品が、発売から34年の時を経て遂にBlu-rayで発売決定! | トップページ | 〈クラシックカフェ〉今週放送予定 »
« 上條淳士の音楽コミック『To-y』唯一の映像化作品が、発売から34年の時を経て遂にBlu-rayで発売決定! | トップページ | 〈クラシックカフェ〉今週放送予定 »


コメント