高橋睦郎『深きより 二十七の聲』
高橋睦郎『深きより 二十七の聲』
伝統という冥界下り
千年 千數百年 久しく忘れられてゐた私の名を呼ぶのは
幾層にも振り重なつた時間の堆積の底 隙閒なく きしきしと
泥の詰まつた鼓膜を打つて 私の眠りを覺ますのは 誰?
(「深きより」)
現代の詩人にとって冥界とはひたすら伝統のことではないか――。稗田阿礼、額田王から、蕪村、河竹黙阿弥まで、古代から近世にいたる先人の霊をして、その詩心を語らしめる。日本語詩歌との長い歳月を結実させた、空前絶後の試み。
「現代詩手帖」好評連載を集成〈三島由紀夫〉との交信・対話を付す。
装幀=原研哉+梶原恵
「私の仕事は つまるところ 私の足跡を消すこと うつそみの私を消すことこそが 歌を立たせること
私がゐるのはただ 私のうたつた 歌のその内 歌を書きとめた文字の竝びの その中に のみ」
(思潮社)
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