トルストイ『文読む月日』北御門二郎訳(ちくま文庫)
1日を1章として1年366日、古今東西の聖賢の名言を、日々の心の糧となるよう結集・結晶させた、一大「アンソロジー」。 トルストイが「自分の著述は忘れ去られても、この書物だけは、きっと人びとの記憶に残るに違いない」と語ったらしい。
【本書より】
・優しい心は、いっさいの矛盾を解きほぐす人生の花である。
それは紛糾したものを解明し、困難なものを容易にし、陰鬱なものを明るくする。
・われわれの生活――それはわれわれの思想の結果である。
それはわれわれの思想から生まれる。もし人が悪しき思想によって語ったり行動したりするならば、ちょうど荷車の車輪が、それを牽く牝牛の踵につきまとうようなものであろう。われわれの生活は――われわれの思想の結果である。
それはわれわれの心の中で生まれ、われわれの思想によって育まれる。もし人が善き思想によって語ったり行動
したりすれば、影の形に添うごとく、喜びが彼につきまとうで
あろう。(仏陀の言葉)
・われわれはみな罪深い人間で、人の悪口を言う場合、それはいつもわれわれ自身にも当てはまるものである。互いに赦し合おうではないか。われわれが平和に生きる唯一の方法は、互いに赦し合うことである。
・人間にとっての功績は、ただその人の努力のみである。人間は努力することのなかにその真の姿を現わすものである。
トルストイ『文読む月日』北御門二郎訳(ちくま文庫)より
「今まで読んだ本で最も価値ある本 心震える本! 一日一読 座右の書にして宝」 以下後半は愛国者を語る輩たちが、増えることへ警告してる。
十二月九日
(三) 己れの人生の意味を問おうとしない人々の盲目ぶりも、自然に反するけれど、神を信ずるとしながら邪悪な生活をする人々の盲目ぶりは、さらに恐ろしい。そして、ほとんどすべての人間が、そのどちらかの範疇に属している。(パスカル)
(四) もしも人がその真の本性を失ったなら——どんなものを持ってきても、それが彼の本性ということになる。ちょうどそれと同じように、もしも真の幸福を失ったら、どんなものを持ってきてもそれが彼の幸福ということになってしまう。 (パスカル)
(五) 悪党の最後の隠れ家——それは愛国心である。(サミュエル・ジョンソン)
(七) 現在愛国心は、あらゆる社会的な悪や個々人の醜行を正当化する口実となっている。われわれは祖国の幸福のためという名目で、その祖国を尊敬に値するものとするいっさいのものを拒否するように教え込まれる。われわれは愛国心の名において、個々の人々を堕落させ、国民全体を破滅に導くあらゆる破廉恥な行為に従事しなければならない。 (ビーチェル)
(十一) 現代の人々にとって愛国心はあまりにも不自然で、無理矢理鼓吹されねば生じない代物である。
それで政府や、愛国心が自分の利益になる連中が、やいのやいのとそれを鼓吹するのである。彼らはもう愛国心など感じない人々や、そんなものはむしろ不利益な人々に向かって鼓吹する。まんまと編されないようにしなければならない。
トルストイ『文読む月日』北御門二郎訳(ちくま文庫)より
【願わくば読者諸子が、日夕この書に親しむことによって、私自身がこの書の作成に当たって経験したような、さらには今なお日々これに親しむことによって、またよりよき第二版作成のための精進の過程において経験しつつあるような、崇高にして実り多き感情を経験されんことを】
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