「ウルトラQ」ケムール人2020年の挑戦
「2020年の挑戦」。こう書けば今なら「あー、東京オリンピック・パラリンピックのことか」と思われるだろう。実は昭和41(1966)年にテレビ放映された空想特撮ドラマ「ウルトラQ」第19話のタイトルなのだ。ざっとあらすじを書けば「何者かに撃墜される自衛隊機。突如消えた人間…と不可解なことが頻発する。まるで小説『2020年の挑戦』のようだ。それは2020年の未来のケムール星に住む500歳のケムール人と交信した内容を記したものだという…」。
ケムール人は医学の驚異的な発達のせい(?)で500歳なのだが、肉体はその分しっかりと衰えていく。それを食い止めるため、なんとも迷惑なことに地球人の若い肉体に目をつけた。とまあ、荒唐無稽だが、54年前の放映当時はそれこそ未来感が満載だった。
「2020年の挑戦」を地球人にぶつけてくるはずだった今年。異星人よりもむしろ新型コロナウイルスの「挑戦」に全人類が対峙することになってしまった。500歳になってもなお生きようとして地球人の若い肉体が欲しかったケムール人。地球人としては迷惑だが、命をつなげようとしたケムール人の「生き方」には同じ生命体として少しは共感できる。
【産経新聞】2020/3/15より
浦沢直樹さんの「漫画 20世紀少年」登場人物・万丈目胤舟の名字は、「ウルトラQ」の主人公・万城目淳からの引用であった。そんな浦沢さんが「ウルトラQ」のベストエピソードは最恐だった」という「悪魔ッ子」と「2020年の挑戦」だった。
「2020年の挑戦」の登場宇宙人のケムール人は「スーツアクターの古谷敏さんは、あのスタイルだからのちにウルトラマン(のスーツアクター)にも抜擢されたのかな」と推測してる。
ケムール人が引き起こした人間消失事件を巡るエピソード「2020年の挑戦」では、ケムール人の特徴的な走り方「当初はローラースケートを履かせる予定だった。でもスーツは8キロもあり、中にある機械はうるさく足元も見えなかったため危険と判断し断念した」らしい。ローラースケートを履かせる代わりに、大股で走らせたことで逆にうまく特徴付けができた。
「当初は最後に刑事が消えるという予定はなかった。あれはテレビ的な発想」だった。「大団円で終わらせず、最後にひっくり返すというあのオチには影響を受けた」浦沢さん。
医学の驚異的な発達から長寿となったが、高齢化により身体が衰えたケムール人。「2020年の挑戦」は近未来の人類の行方を扱って、ディープなテーマをエンターテイメントで包んでいる。
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