俵万智の第6歌集「未来のサイズ」
著者による「あとがき」より
短歌は、日々の心の揺れから生まれる。どんなに小さくても「あっ」と心が揺れたとき、立ちどまって味わいなおす。その時間は、とても豊かだ。歌を詠むとは、日常を丁寧に生きることなのだと感じる。
「ほめ言葉たくさん持っている人と素顔で並ぶ朝のベランダ」
「子らは今その挨拶の意味を知る命「いただきます」ということ」
「長椅子に寝て新聞を読みおれば父が私を「母さん」と呼ぶ」
「誰だって何かで死ぬと思えども死よりも病を恐れる心」
「プレミアムモルツ飲みたくなるような病名を聞く初夏の病院」
「昼食のカレーうどんをすすりつつ「晩メシ何?」と聞く高校生」
「いきいきと息子は短歌詠んでおりたとえおかんが俵万智でも」
「自らは食べずひたすら振る舞えり料理上手な君の人生」
「べらぼうにウマいと言われ丁寧にダシのとりがいある男なり」
「すれ違うことに不慣れな生き物となりてスマホという命綱」
俵万智「未来のサイズ」(2020.9)より
この歌集では「蛇笏賞」と「迢空賞」を受賞されてる。「コロナ禍を経るなかで、より確かなものになったと思う。この歌集を作る、届ける、読む、選ぶ……関わってくださった全ての人に、ありがとうございます。」
【俵万智】1962(昭和37)年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代に、佐佐木幸綱氏の影響を受け、短歌を始める。1986年に角川短歌賞、1988年に現代歌人協会賞を受賞。『サラダ記念日』『プーさんの鼻』『考える短歌』など、歌集・著書多数。
« 映画『次郎長三国志』年忘れシネマスペシャル | トップページ | 浅倉久志〈ユーモア・スケッチ傑作大全〉国書刊行会 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント