『聖牙神話シリーズ・全5巻』葛城稜(ソノラマ文庫)

『神(デーヴァ)の接吻(くちづけ) 』聖牙神話1
ある日、真由理の家に大きな荷物が届いた。それは柩のようなもので、中に入っていた祥という少年は、真由理の目の前で不良少年の首に噛みつき、血を吸った。だが祥は、いわゆる吸血鬼ではなく、人間の血に混じる摩神アスラの血を吸う“聖牙神”だった。祥は、アスラの血により超常能力を持った日本の陰の支配者・厳行雲を倒すため、仲間に呼ばれて日本にやって来たのだった…。
朝日ソノラマ (1990/12/1)
横浜、横須賀、鎌倉、湘南などが舞台となって映像として浮かんでくる。作者が歩いて過ごした土地に、古代インドからの神話世界に生きたキャラクターたちが、現代劇としてからんで活躍する。
人を惑わして食うという【羅刹】たちがドラマに関わって、古代インドを通して神奈川地域で活躍するのが異様に説得力あると感じる。

『天使の記憶』聖牙神話2
親友のバイラヴァ、ラージャの仇を捜す祥は宰頭龍也という男に目をつける。一方、祥を捜す沙々貴は偶然、龍也の姪のかのこと知り合い、祥とともに宰頭家にしばらく逗留することになる。そしてある夜、祥は突然現われた幻の獅子に襲われた。獅子はさらに、龍也の命も狙う。この獅子の正体は? 龍也は果たしてラージャの仇なのか?
朝日ソノラマ (1991/3/30)
実在する横浜地域が舞台になってる長編シリーズは、地図や画像を検索しながら読む。いろんなビジョンが浮かんで、キャラクターが躍動する。一千年も生きてる主人公の祥が敵対する存在にやられて、回復する間もなく次々に事件が起きてしまう。その背後には嫉妬する愛憎があるのは、【天使】と【羅刹】と【人間】の世界を改めて考えさせられるジュブナイル。

『紫瞳の堕神(ラセツ)』聖牙神話3
東京・青山墓地で、全身の血を抜かれて殺されるという“吸血殺人事件”が起きた。吸血鬼であるなつみの仕業とみた沙々貴は、祥が彼女を殺しに来るに違いないと考える。その沙々貴の前に、魔神アスラ復活を企んでいた宰頭龍也の仲間のラセツ、朝倉と、超人的な力を身につけ別人のように変貌した鷹梁が現れる。朝倉が、鷹梁が、そしてなつみが、祥の命を狙って動き始める―!
朝日ソノラマ (1991/9/30)
青山億ションに住むシェパード犬を飼い慣らすラセツと沙々貴が出会い、同じラセツと生きているのに違いがあきれた行為にもなるのだった。善行するキャラクターの場面がだんだんなくなっている。

『黎血の魔少年』聖牙神話4
魔神アスラの血を目覚めさせた黎児が、再び祥の前に姿を現した。超能力を駆使した二人の闘いで、街が壊されていく。そして、倒壊したビルから走り去る祥の姿が写真に撮られ、爆弾テロの犯人として報道された。一方、朝倉と八十島の二人は、黎児と鷹梁を陰で操る者を突き止めていた。やがて、遂に祥と黎児の最後の闘いが始まり、黎児が作り出した巨大なエネルギー塊が空を覆った。
朝日ソノラマ (1992/3/30)

『破壊神復活』聖牙神話5
黎児との闘いで重傷を負い、なつみに連れ去られた祥は、自失状態だった。一方、ラージャをアスラに変え、黎児を陰で操っていた者が、遂に自ら動き出した。遥かなる太古、カーリー女神との闘いに破れ、一滴の血となって人間界に逃れたアスラそのものとして蘇ったその男は、祥のルドラとしての力を己れのものにして、人間界をアスラの世界に変えようと謀っていた―。
朝日ソノラマ (1992/12/30)
【登場人物】
亜光祥 あこうしょう
約千年前、インドでカーリー女神の儀式を受け。人間の血に混じる魔神アスラの血を吸う者-バイラヴァとなった。見掛けはl7、8蔵の少年。バイラヴァの中でも、シヴァ神そのものの化身であり、竺叉戟という武器を操る。
淡々貴敦志 ぎさきつよし
神々の世界で罪を犯し。人間界へ降ろされた元デーヴァ。こうした者をラセツと言い、人間界には他にも多くのラセツがいる。ラセツはデ一ヴァの化身に殺されることで罪を許され、天界へ帰ることができる。そのため、彼は転生するたびに祥を追いかけ回している。
宰頭嬰児生 さいとうれいじ
生まれつき超能力を持っていたため、ラセツである叔父の龍也に利用され、アスラの血を目覚めさせられた。正体不明のアスラに操られ、祥と闘って死んだ。
朝倉一之
ラセツ。相手の目を見ただけでモの者を殺すことができる邪視の力で暗殺を請け負っていたが、祥に血を吸われてその力は消え、本来の自分を取り戻して組織を抜けた。現在はその組職と敵対関係にある、麻薬撲mのための私設機関にいる。
八十鳥征治 やそせいじ
恩人を祥に殺されたため、南米から祥を追って来た元殺し屋。が、祥に血を吸われ、現在は朝倉と同じ私設機関にいる。
山本なつみ
祥に恋をし、祥を吸血鬼だと思い込んで自ら吸血鬼となり、祥を追い一度は祥の手で塵となったものの、黎児の血によって蘇り、黎児との闘いで重侮を負った祥を連れ去った。
天賀真輛 てんかしんすけ
人間の天賀はすでにインイ旅行中に病死し、その身体にヴィシュヌ神の化身である人獅子の魂が人うている。ラセツたちの企みを阻止する使命を帯びて人間界に来た。
鷹染 馨 たかはしかおる
幼馴染みである黎児の姉・かのこを祥が殺したと思い込み、その憎しみの心を黎児を操る者に利用されて祥の命を狙っている。
【作者】葛城稜
10月22日、横浜生まれ。1990年『プログラム・アシャ風たちの錯覚』(朝日ソノラマ文庫刊行)で小説家デビュー