レフ・トルストイ『復活』(岩波文庫)
軍隊生活のあいまに伯母さんの家によった青年貴族ネフリュードフは小間使いのカチューシャに惹かれる。それはそれは美しい少女であった。
翌朝100ルーブル渡して立ち去った。
数年後、ネフリュードフは陪審員として裁判に列席。売春婦の殺人事件。被告がひきたてられる。「カチューシャ・マースローワ」あの人だ。ネフリュードフの子を身ごもって伯母の家を追放され、零落の身に。無罪なのだが手続きのミスで流罪に。
ネフリュードフはカチューシャの助命嘆願に奔走。結婚して助けようと思いつめる。
獄中でシモンソンという政治犯がカチューシャに恋をする。シモンソンはシベリア送りで4年の刑が確定している。カチューシャを救おうとする有力者ネフリュードフの存在を知っており、シモンソンはカチューシャとの結婚についてネフリュードフと相談。
カチューシャが気に掛かり、裁判や刑務所の実情を知っていくうちに、刑務官の腐敗を目の当たりにするに至った。ついには土地を農民へ与え、自身は流刑地に赴く……
【本文より】
もとをただせば、人びとが悪人でありながら悪をただそうとするという不可能なことをやろうとしているために生まれているのであった。悪人が悪人を矯正しようとして、それを機械的な手段で達成できるものと考えたのである。しかし、その結果として生まれたものは、生活に困っている人びとや欲に目のない人びとが、自分自身もとことん堕落すると同時に、自分で苦しめている人びとをもたえず堕落させているという現実であった。
【感想】本書の挿絵を描いた画家と作者とのやり取りが、興味を惹かれてしまった。
力を込めて書いてる入魂の作品に、信頼してる美術家の視覚メディアを入れて、自信作として出販したいトルストイの想いが伝わるエピソードだった。原稿の三分の一だと見せられて、画家はトルストイが身を削り物語を書いてると確信した。
やがて連載された作品は長編小説の容貌となり、後半はどんどん作者の想いが膨らんで、前半ほどに推敲されたソリッド感は失って展開される。トルストイのなかでも読みやすい作品といわれる『復活』の難関は、後半の独白に近い断罪について感動して受け止めてられるかに関わっている。
途轍もない新和力がある世界的な作家が書いた、後期の代表する傑作であるので、ロシアが戦火になっている今も読む価値は多様に思います。
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