『今、生きる秘訣』横尾忠則対話集 (光文社文庫)
岡本太郎(二十一世紀の芸術)
今西錦司(目に見えない世界)
木村裕昭(病いは心のアンバランス)
島尾敏雄(夢体験)
加藤唐九郎(土と火の対話)
岩渕亮順(食物で運勢が変わる)
川島四郎(生きる秘訣)
山手国弘(カルマからの脱出)
手塚治虫(宇宙文明の夜明け)
文庫版解説・河合隼雄
この対談集は「瞑想(メディテーション)」がテーマとなっている。発行したときにタイトルが「宇宙瞑想」だった。文庫化に伴って「今、生きる秘訣」と改題される。
対談された方々は殆ど亡くなって、横尾さん本人しか現在はおりません。が、昭和時代にそのジャンルを極めた偉業を果たした人たちの貴重な発言を横尾さんが見事に引き出してる。
「人間が生きている命に筋というのがあると思う。その筋を生まれたときからずっと持ち続けている人間と、しょっちゅう変えちゃったり、状況に応じて変えてしまう、そういう人間というのがあると思うのね」岡本太郎
「昔から、無用の用ちゅうやろ。そやから本当に、学問でもおれは目的があって大学の教授になりたいとか文化勲章が欲しいとか、そんなことで学問はしとらへんな。これも若いときから考えてきたんやけど、十年間くらいぼくがカゲロウの研究をやってたときに、やっぱり自然と密着したけど、坊さんの心境てこんなもんやろかと思ったね。もう自然に入り込んでしもうて。そして無欲になったね」今西錦司
「病気というものは、どうも繰り返すもんだ。肉体はまあ物質ですからね。それに対して、物質力で薬を与えたり、悪いところを取れば、もうその部分はなくなりますね。しかし、また別の所に病気が起こってくる。そうなると病気が起こる原因というものが、その部分にあるんじゃなしに、どっか、もっと別の世界、別の次元にあって、それが肉体に投影してくるのが病気であると、こう考えておったんですね」木村裕昭
「陶芸に腹を決めるまで、いろんなことをやったが、やってもやっても道が開けないんですね。迷い迷っていろいろとやっとった。そのとき思ったんですが、世の中っていうのはいくら真面目にやっても誰も真面目を認めやしないと。いくら何をやっとっても、けっきょく自分のやりたいことをやっとったほうが勝ちなんだと思った。で、もう世間を相手にせずに、一人だけで作品を作っていったんです。そして、今度展覧会をやったらい、えらい人気で。二回とも日本一になっちゃったんです」加藤唐九郎
「いい作品を残しておこうと思ったら、欲や迷いがあったらできない。思いきってぱっぱっと感じの悪いやつは割って捨てるだけの欲のない考えでいかなくちゃだめだ。でも、なかなか割れないものですよ。自分の焼いたものを割るということはね。けれども、そこを思い切って割ることの気持ちがないと、いいものは残らないですね」加藤唐九郎
「私は四歳になる男の子と、それから、大型の猿を一緒に解剖したことがあるんですが、もうどっちが人間だか猿だかわかりません。かろうじて、こっちが毛が生えているから猿だと思うくらい、人間と猿の内蔵は変わってません。ですから、頭は進化してるんですけども、内蔵の構造なり配置、機構は変ってませんね。それを内蔵まで発達したと思って、今のように三度食うのがいいっていうのは、これは間違いなんです。あくまで自然に即して物を食う。それが、くどいようだけど、八十五歳の好青年をつくる原因なんです」川島四郎
「運動量については大いに意見があるんです。人間の最も適正な運動量というのは、一日分のエサをとるために、あちこちあさり回り歩く時間と体力ですね。それが最も適正な運動量です」横尾忠則
「文明はあるところまでくると繰り返してだんだん衰えてきて、自然にだめになっちゃうような気がする。まだ地球的な規模の国家問題とか国家意識みたいなものがある間はだめで、鳥瞰よりもっと上の視点から地球を眺めたときに初めて気がつく人が出てくるんじゃないかと思う」手塚治虫
これだけジャンルを超えた対談をできる人は、いないのではないかと思う。まして文庫で読めるとは凄い内容だと考えられる。これら叡智の言葉を今に活かして、活用できたら黄金の価値が湧き上がるだろう。
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