『日のあたる白い壁』江國香織〈集英社文庫)
「出会った絵について書くことは、でも勿論私について書くことでした」ドラクロワ、ゴッホ、マティス、荻須高徳、小倉遊亀、オキーフ…etc.。古今東西の27人の画家の作品をとりあげ、「嫉妬しつつ憧れつつ」自由に想いを巡らした、美しくユニークなエッセイ集。愛らしい小品から名作まで、画家たちの様々な作品を鑑賞しながら、江國香織その人に出会う―二重の楽しみが味わえる、宝物のような一冊。
オキーフの絵の透明感は「空気の澄み方におどろく。深呼吸をしたら、肺がつめたくなりそうだ」
ゴッホの絵は「じかに胸を打たれる感覚は音楽に近く」
ホッパーは「観るものをひきこんで疎外する」。
目次 : ゴーギャンのオレンジ―ゴーキャン「オレンジのある静物」/ 完璧に保存される物語―カリエール「想い」/ 体の奥がざわめくなつかしさ―ホッパー「海辺の部屋」/ 祖父の家―児島虎次郎「睡れる幼きモデル」/ ボナールのバスタブ―ボナール「浴槽」/ ポケットに入れて―ドラクロワ「花の習作」/ うつくしいかたち―東郷青児「巴里の女」/ あの怠さ―パスキン「昼寝」/ 意志的な幸福―カサット「劇場にて」/ ユトリロの色―ユトリロ「雪の積った村の通り」/ 宗教のような、音楽のような―ゴッホ「夜のカフェテラス」/ 同化するということ―荻須高徳「カフェ・タバ」/ セザンヌのすいか―セザンヌ「すいかのある静物」/ 過渡期の人・マネ―マネ「海にとび込むイザベル」/ あるべき場所のこと―グレコ「聖アンデレと聖フランシスコ」/ ひらがなのちょうちょ―ルドン「ちょうちょ」/ 豪胆さと繊細さ―小倉遊亀「家族達」/ プリミティブという力―ムンク「お伽の森の子供たち」/ かつて持っていたくまのぬいぐるみ―ワイエス「グラウンドホッグ・デイ」/ 豊かさ、幸福さ、まっとうさ―マティス「ヴァイオリンのある室内」/ インタレスティングということ―カラヴァッジョ「聖トマスの懐疑」/ 見知らぬ絵―カーシュテン「赤い台所」ほか/ オキーフの桃―オキーフ「桃とコップ」「この美術館にあるなかで、どれでも好きな絵を一枚もらえるとしたら、どれがほしい?」
ただし絶対飾らなきゃいけないんだ。売るとか、財産として所有するとか、そういうんじゃなくね。真っ白い壁の、広いきれいな家に住んだら、とかいうのも駄目で、いま住んでいる家に、必ず飾らなきゃいけない。(本書より)
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